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第六十三回
日本人と箸の千三百年
「嫌い箸」についてお話ししましょう
日本人と箸のお付き合いは長く、約千三百年前に書かれた日本最古の歴史書にも箸が登場します。箸を使って食事をする国や地域は多くありますが、そのほとんどが箸とスプーンを併用する文化で、日本のように箸のみで食事を済ませる文化は世界的に珍しいとのことです。この頃は日本の食文化も多様化し、箸を使わない食事も増えましたが、三食とも使わないということはありません。生まれて一ヶ月目に行う「お食い初め」から一生を終えるまで、日本人の人生は箸と共にあり、それ故か、箸の作法は数も多く、かつ厳し目であるように感じます。この度は箸の作法のうち、「嫌い箸」についてお話ししましょう。
「嫌い箸」は「禁じ箸」や「忌み箸」とも呼ばれ、マナー違反とされる箸の使い方のことです。
昔は学校の授業で習い、教科書にも多くの嫌い箸が紹介されていました。その紹介文の冒頭に、「忌むべき病を左に掲ぐ」と書かれているのです。嫌い箸は「必ず避けなければいけない、憎むべき病」であると。子どもたちが恐れて絶対にしないでおこうと思わずにはいられない書きっぷりですが、それほど「注意しなさい!」ということだったのでしょう。
その一つに、「刺し箸」があります。料理は、もとは動物や植物の命。その大切な命を刺してはならないと、刺し箸を通して子どもたちに伝えます。「食べ物の命を指す箸は、いずれ人の命を刺す箸になる」という怖い教え言葉があります。「食べ物を刺したからって、人を刺したりはしないわ」とどなたもお思いになるでしょう。私もそう思います。しかし、ここで先人が伝えたかったことは、「人の命も食べ物の命も、どちらも等しく尊い命である」ということ。子どもたちは幼い頃から食卓で、そのことを学びます。
同じ「さしばし」ですが、人を箸で指差す「指し箸」も嫌い箸の一つです。指し箸をしないようにする為には、箸を持ち続けないことです。こまめに箸置きに置くようにしましょう。

(2/26/2026)

筆者・森 日和
禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com














