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第七十三回
十七条憲法に学ぶ〝和の国の原点〞
対話と役割に生きる日本の精神
今週は、先週号に引き続き、日本で初めて作られた成文法「十七条憲法」の後半の条文を見て参りたいと思います。古代の人々が何を大切にし、どのような国を築こうとしたのか、その想いに触れて参りましょう。
【第七条】 人各有任(ひとおのおのよさしあり)
人にはそれぞれ役割(使命)があります。自分が果たすべき役割を忠実に成し遂げ、でたらめでないようにしましょう。役割を人の為に定めるのではなく、役割に適した人を選ぶようにしましょう。
【第十条】 絶忿棄瞋(こころのいかりをたちおもてのいかりをすてよ)
心の怒りを鎮めて、表に出さないようにしましょう。人と考えが違っていたり、人が逆らったとしても、腹を立ててはいけません。人の考えは様々で、私にも人にも絶対善などなく、お互い凡夫(不完全な存在)にすぎないのです。人が怒りをぶつけてきても、怒らず冷静に自分に過ちがないかを省みましょう。また自分が正しいと思っても、それに執着せず、人々の意見をよく聞き、共に高みを目指して行動しましょう。
【第十七条】不可独断(それことはひとりさだむべからず)
物事を独断で進めてはなりません。必ず皆で適切に議論するようにしましょう。些細な案件は必ずしも皆で話し合う必要はありませんが、重大な案件については判断に誤りがないかを疑い、慎重に検討する必要があります。議論を重ねていけば、おのずと道理にかなった結論に至るでしょう。
この第十七条で諭された「不可独断」の姿は、日本最古の歴史書「古事記」にも見ることができます。
例えば、天照大神が天岩戸に隠れたことで世の中に多くの災難が降りかかった時も、神々は集まって話し合い、皆で知恵を出し合って、問題を解決するに至りました。
その教えはその後多くの時代に受け継がれていきます。
聖徳太子の時代から約1300年後、明治時代に発布された「五箇条の御誓文」の第一条にも「広く会議を起こし、万機公論に決すべし」とあります。日本はずっと、皆で話し合うこと、人の意見に耳を傾けること、そして己の考えを疑うことを重んじてきた国なのです。

(5/6/2026)

筆者・森 日和
禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com













