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第六十二回
日本でよく聞く言い伝え
「北枕は縁起が悪い」は、なぜでしょうか
「北枕は縁起が悪い」
日本でよく聞く言い伝えの一つです。「北枕」とは、頭を北に向けて寝ることです。なぜそのようにすると縁起が悪いと言われるようになったのでしょうか。その理由についてお話ししましょう。
旧暦2月15日は「涅槃会」の日です。涅槃会は、仏教の開祖であるお釈迦様が入滅(死去)なさったとされる日に行われる仏教行事のことです。日本の多くのお寺で涅槃図が掛けられ、法要が行われます。涅槃図には、沙羅双樹の下で入滅されたお釈迦様、そのことを嘆き悲しむ仏弟子や菩薩たち、お釈迦様のお母様の摩耶夫人、そして多くの動物たちが描かれています。
涅槃図はお釈迦様が入滅された時の様子のままに、頭を北、体の正面を西に向けて掛けられます。つまり、お釈迦様が北枕でお亡くなりになったということです。その後、「早く仏のもとに行けるように」と願いを込めて、亡くなった人の頭を北に向けて安置するようになったことから、「北枕は亡くなった人が寝る向きであるから、生きている人はその向きで寝ることは控える」となり、今の言い伝えに繋がっていったようです。
日本最大級の涅槃図は御寺泉涌寺(京都)のものです。今から約200年前に描かれ、縦約16m、横約8m、重さは約150kgもあります。
涅槃図をよく見ますと木に包みが引っかかっています。命が尽きそうになっているお釈迦様に摩耶夫人が雲の上から薬をお投げになります。しかし、その薬が入った包みは不運なことに沙羅の木にひっかかってしまい、お釈迦様は亡くなってしまわれます。木に引っかかっている包みは、摩耶夫人が我が子の為に投げた薬袋なのです。この故事から、薬を処方することを「投薬」というようになったとか。
仁治3年(1242年)に四条天皇のご葬儀をなさって以降、泉涌寺は歴代天皇と縁が深く、江戸時代の全ての天皇、皇妃の御陵(お墓)が境内に造営され、大切に守られています。その為、皇室の菩提寺として日本で唯一「御寺」と呼ばれているお寺です。

(2/19/2026)

筆者・森 日和
禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com




















