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前回のコラムで大好きな「武蔵小山商店街」を紹介したが、お気に入りの散歩街は他にもありました。下町ど真ん中、日本橋人形町。この地名は、江戸時代にこの地域に歌舞伎小屋や人形芝居の小屋が集まり、人形を作る職人や人形を売る店が多く賑わい、人形遣いが大勢住んでいたことに由来する。粋な町名じゃないですか。そんな訳でこの街に来ると何故か下町というより江戸の匂いを感じる。季節ごとにたくさんの露店が並ぶのも楽しい。正月に向けた歳の市、夏の瀬戸物市、5月の神田祭、秋の人形市、冬の餅つき大会など事欠かない。夏には浴衣姿の女性も度々目にする。
月に1~2度欠かさずに行く蕎麦屋「松竹庵」では鳥おろし蕎麦(1300円)を注文。日本で一番と言ってもおかしくない。美味し過ぎて病みつきになっているのだ。更に玉子焼き(800円)も絶品、実家が玉子焼き屋の私が言うので間違いない。甘酒横丁の「佐々木酒店」ではこの季節にある生酒粕(500円)を購入。家に持ち帰りお湯で溶かして好みに合わせて砂糖を入れて飲む。出来合いの甘酒は甘いので調整出来るのは嬉しい。実は大学時代に九段の靖国神社近くの「甘味処 初音」でアルバイトをしていたが、その姉妹店が人形町にもあり大人気となっている。お勧めは小倉あんみつ(780円)とおしるこ(850円)、お雑煮(950円)だが、目移りしてしまう。あんみつは黒蜜、白蜜のどちらかを選ぶか迷うところだ。初音の向かい側には毎週商品が変わって行く謎の貸店舗がある。テーマは一貫して「閉店セール」。どう考えても怪しいのだがそこがたまらない。顧客ターゲットはぶれない中年女性に絞り込んでいる。厚手の靴下、下着、手袋、派手なヒョウ柄ブラウス、異常に伸びるスパッツなど確信犯…。時には8割引きの旅行カバンやポーチも。余りの安さに思わず手が出てしまう。ドン・キホーテに負けない楽しさ。スペシャルイベントでは世界で話題になっているバンクシーの版画なども販売する凄さ。客層と作品のギャップを感じたがこれまた面白い。
人形町は買物だけではなく、安産祈願として有名な「水天宮」がある。毎月戌の日には妊婦さんが安産を願って参拝にやって来て街が華やかな雰囲気に。帰り道は下町情緒ある裏道を歩きながら隅田川まで足を運びたい。春風が頬に当たる両国橋の上で、行き交う船を眺めるのも素敵だ。これからの季節、稽古後の浴衣姿のお相撲さんに出会う機会もありそう。ホッとする町、お金を余り使わない町、江戸の町、人形町に皆さん行ってみませんか。楽しいに決まっています。
■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。
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