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第七十六回
見えないものを観る旅
観光の本質と奈良の大仏に宿る祈り
「観光」という言葉(ししょごきょう)は、古代中国の四書五経(ししょごきょう)の一つ「易経(えききょう)」の一文である「観国之光(かんこくのひかり)」が語源とされています。その意味は、「国の文化、政治、風俗をよく観察すること」、「国の風光・文物を外部の人々に示すこと」という意味・語感を有していることも考えあわせると、「観光」の定義は、単なる余暇活動ではなく、より広い意味を持つものと考えられます。
観音様は、「音を観る」と書きますが、音そのものを見ることはできません。「観る」とは、目に見えないものを観ることなのではないかと思うのです。
観光で訪れた地の建造物は目でみることができます。しかし、ほんとうに観るべきものは、その背景にある歴史や、そこへ至る人々の想い、積み重ねられてきた祈りや願いなのだと思います。
形だけを見るのではなく、その奥にある「見えないもの」まで感じとる時、旅はより深いものとなります。それこそが、その土地、その文化、その国が放つ光を観るという、ほんとうの「観光」なのだろうと思います。
と言うわけで、この度は、奈良に訪れると多くの方がお行きになる「奈良の大仏」の光をお話ししたいと思います。
奈良の大仏は正式名称を「盧舎那仏坐像(るしゃなぶつざぞう)」と言います。慈悲の光で世の中をあまねく照らし導く仏様でいらっしゃいます。高さはおよそ15メートル。世界最大級の坐像です。なぜそれほどに大きな仏像をつくろうと思ったのでしょうか。
第45代 聖武(しょうむ)天皇が造立を命ぜられたのは今から約千三百年前のこと。
その治世は、政治的な混乱が相次ぎ、日照りが長引き、頻発する地震、そして疫病が流行するなど災いが絶えませんでした。その時の天皇のご心情が歴史書「続日本紀」に記されています。
「責在一人(責任は私一人にある)」
天皇は、帝王学として「統治者が良い政治を行えば国が平和になり、悪い政治を行えば天が災いを起こす」という教えの「天命思想」を学びます。その為、災いの原因は自分一人にあると天皇は信じていました。
(次号に続く)

(5/27/2026)

筆者・森 日和
禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com
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