第三回
今日は『正月事始め』
お正月にはしめ縄や門松、鏡餅といった正月飾りを用意します。それぞれに役割や深い意味があるのですが、今回は、しめ縄についてお伝えいたします。
毎年お正月に、各家庭にお越し下さる年神様。お正月の間、年神様に心地よくお過ごしいただくために、大掃除をして家の中の穢れを祓います。穢れを家の外に出して一安心、と言うわけにはいきませず、放っておくと再び家の中に穢れが入ってきてしまいます。どうすれば清らかな状態を保つことができるのでしょうか。その解決策は、「玄関にしめ縄を張ること」です。しめ縄の役割は、結界を張ること。外界と内界(家の中)を隔てて、外界の穢れを家の中に入れないようにする役割をもちます。
しめ縄のルーツは古く、その語源は、日本最古の歴史書である「古事記」に登場する「尻久米縄(しりくめなわ)」と言われています。ある時、太陽神でいらっしゃる天照大神様が天岩戸にお隠れになるという大事件が起こりました。世の中は真っ暗となり、悪霊悪鬼がはびこり、多くの厄災が降りかかりました。そこで、神様たちは集まって相談をし、智慧の神様は作戦立案・総指揮、舞を舞うことが得意な神様は舞を舞い、鏡を作ることが得意な神様は鏡を、曲玉を作ることが得意な神様は曲玉を作るなど、役割分担をして、力を合わせてこの難題に立ち向かいました。作戦が功を奏し、天照大神様が岩戸からお出になった時、再びお隠れになることができないようにすぐにしたこと、それが岩戸に尻久米縄を張ることでした。
宮崎県高千穂町にご鎮座する天岩戸神社はこの物語の舞台と伝わります。毎年、太陽神である天照大神様のお力が岩戸に隠れたことによって弱まったことになぞらえて、最も太陽の力が弱い日である「冬至の日」に、しめ縄を張り替える神事が行われています。新しいしめ縄に張り替えることによってしめ縄のご神威を強く保たせて、再び天照大神様が隠れてしまわれることがないようにと祈り続けられています。
(12/17/2024)
筆者・森 日和
禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com