元号について|べっぴん塾

 

第五十一回

国家の安泰と国民の幸福への深い願い
元号についてお話ししましょう

 

日本の現在の元号「令和」は、約1300年前に編纂された日本最古の和歌集「万葉集」から言葉が選ばれ、「心を寄せあう中で文化が生まれ育つという意味が込められている」と当時の安倍首相が新元号への想いを説明されました。梅花の宴に集った人々が詠み合った和歌から選ばれた言葉ですから、きっとその情景を思い浮かべておっしゃったのでしょう。外務省が公式に発表している「令和」の英訳は「Beautiful Harmony(美しい調和)」。それぞれが奏でる音が調和して、より美しい音色となりますようにと、平和への願いが込められています。

元号が変わることを「改元」といいます。改元は、今は天皇の御代替わりの時に行いますが、天皇一代につき一つの元号とする「一世一元」となったのは明治以降のこと。それ以前は、御代替わりの時だけではなく、地震や凶作、火災、疫病の流行、戦乱など、「良くないことが起きた時」にも「空気を切りかえよう!」と改元を行いました。また、良いことが起こった時にも改元をしました。良い状態なのであれば、そのままで良いような気もしますが、昔の日本人は、「更に良くなりますように!」と改元をしたそうです。良い時も、良くない時も「より良くなりますように」と改元をする。なんとも前向きな習わしです。

元号の制度は旧皇室典範で法令化されてきたのですが、戦後、新しい皇室典範にはその記載が省かれてしまい、元号の法整備は長らくなされていませんでした。いつでも元号をなくすことができる状況だったのです。しかし、元号は今となっては日本にしか残っていない文化であり、新しい御代への願いであり、なにより歴史を振り返ると、独自の元号は独立国家の証。昭和54年になってようやく元号を守る法令が制定されました。元号を使う人が減り、今後、「元号って必要なの?」とお思いになる方が増えてくるかもしれません。良き世への願いが込められている元号ですから、これからも日本に残していきたい大切な文化と思っています。

(11/25/2025)


筆者・森 日和

禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com

 

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