第五回
なぜ日本人は一致団結が
得意なの?
明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、突然ですが、日本の新年の挨拶はなぜ「おめでとうございます」と言うのでしょうか。
こちらも前号でお話しいたしました、「予祝」の文化に由来しています。
年初より皆で協力して、めでたい雰囲気をつくり、その雰囲気で世の中を包むことによって、一年の福を招くということを行っています。
その雰囲気づくりの邪魔とならないように、喪中の方は喪中はがきを出し、新年の挨拶を旧年中に済ませておくという配慮をします。喪中の家にあるとされる「穢れ」。穢れは人にうつると考えられており、人にうつしてしまったらご迷惑をおかけするということから、新年を迎えると、喪中の方は、外出だけではなく、電話やはがきなどの接点も控える「忌みごもり」をして、穢れを外に出さないという配慮をするのです。喪中ではない方は、めでたい雰囲気をつくる協力をし、喪中の方はめでたい雰囲気を壊さないというかたちで協力をし、皆に福が訪れるようにと願います。日本人が一致団結を得意とするのは、毎年年初に皆で協力して皆の福を招く為の行動をしているからとも伝わります。
喪中はがきが届いた時は、ご家族を亡くされたお相手のお気持ちに寄り添い、めでたい言葉の挨拶は控え、松の内(一般的に1月7日まで)を過ぎてから、寒中見舞いまたは寒中伺いを以て新年の挨拶をいたします。「寒中」とは、二十四節気の「小寒」「大寒」の期間をさしますので、立春の日までに送るようにいたします。
この頃は、年賀状をはじめ日本のしきたりを面倒だからなくそうとおっしゃる方は少なくありません。しかし、他者の幸せの為に「おめでとう」と言う、他者のために自身の行動を制限するといった、他者を優先する心の豊かさを育むしきたりは日本に残り続けてほしい、誇らしい文化と思っております。
(1/8/2025)
筆者・森 日和
禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com