「私でお役に立てるなら」と静かに・・・日本の伝統文化 風呂敷|べっぴん塾

第二十二回

「私でお役に立てるなら」と静かに・・・
日本の伝統文化 風呂敷

日本の伝統文化「風呂敷」。便利な上、風呂敷から教わることは多く、私は風呂敷を風呂敷大先生と呼んでしまうほどです。

鞄の中に入っている風呂敷は小さく畳まれているので、荷物が多い時も、邪魔だと思ったことはありません。風呂敷は鞄の中で小さく存在し、静かに出番を待ちます。いざ出番!となっても、まずは後輩に手柄を譲ります。風呂敷は、約1300年前の宝物が保管されていた正倉院の目録に「つつみ」という名で登場するほどの大先輩。しかし、紙袋やショッピングバッグがあれば、風呂敷があってもそちらを使うことがほとんど。風呂敷は、後輩に手柄を譲り、そっと見守る「先輩としての姿」を教えて下さいます。

誰しも入社して間もない頃は、一刻も早く会社の戦力となることができるよう、率先して「やらせて下さい!」と申し出て、経験を積ませていただきます。しかし、いつまでもそうであってはいけません。自分ができるようになりましたら、次は後輩が育つために、経験を後輩に譲らねばならない時期が訪れます。風呂敷は自分ができることであっても、時に得意なことであったとしても、手柄を後輩に譲ります。皆様が風呂敷をお使いになる時は、他に紙袋もショッピングバッグも持っていない時ではないでしょうか。そのような時に初めて風呂敷は「私でお役に立てるなら」と静かに出てきて、小さく畳んでいた体を大きく広げ、運搬や保護、外界の邪気から中の物を護るなどをなさって下さいます。

そして、圧倒的な受容の姿も示して下さいます。風呂敷は真っ平らな物です。しかし、物を包む時には、相手の姿形に寄り添って立体となります。自分がどうでありたいかよりも、自分の姿形を変えてまでも相手の状態に寄り添い、包み込む「大人としての姿」を教えて下さいます。

風呂敷は便利なだけではなく、色々なことを私たちに教えて下さいます。皆様のお鞄にも小さく畳んだ風呂敷をおひとつ入れて、お側に置かれてはいかがでしょうか。

URLはこちら: https://youtu.be/u0NZbQZYwyY?si=Jz_m8jBKgiKeOWqJ

(5/8/2025)


筆者・森 日和

禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com

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