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第六十回
大切に残したい
「いただきます」の心
手を合わせて「いただきます」。日本では誰もが行う食前の挨拶です。今はその意味をかみしめておっしゃる人はほとんどいないと思いますが、たった6文字の「いただきます」に込められた意味や想いは深く、とても大切なことに立ち返らせて下さる魔法のような言葉なのです。
「いただきます」の語源は「命をいただく」です。食事はお肉やお魚、お野菜の大切な命をいただく行為です。命をいただくことはかわいそうなのですが、命をいただかねば私たちも生きていくことができません。それならばせめて、毎度の食事の前に「(命を)いただきます」と言って、その有り難みを忘れないようにします。今はどれほどの人が「食事は命をいただくこと」という気持ちで「いただきます」をおっしゃっているかはわかりかねますが、子どもたちにはそのことをしっかりとお伝えして参りたいと思っています。そうすれば、「命をくださった牛さんに恥じない生き方をするぞ!」や「『牛さんが食べられるなら貴方で良かった』と思ってもらえるように生きよう!」と考える子どもがいるかもしれません。子どもたちの人生はより充実したものとなるのではと思います。
食事をする為にいただいているものは他にもあります。太陽や大地、水、風などの自然の力、先人の知恵、農家さんや漁師さんや牧場の皆さま、調理をする為の電線やガス管を通して下さった工事業者の皆さま、スーパーに食材を運んで下さったトラックの運転手さん、食事を作ってくださる人、食材が運ばれる為の道路、列車、船、飛行機・・・きりがありません。多くの皆さまのご尽力によって食事をすることができていると思うと、いい加減に食べることはできなくなります。「大切に味わって、残さず食べよう」となります。そのように考え出すと、食事に限らず、何をするにしても、実は途轍もなくいろいろな人の支えによって成り立っていることを思うことができます。「いただきます」の心、大切に残して参りたいと思います。

(2/5/2026)

筆者・森 日和
禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com
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