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第六十一回
仏教の言葉に由来
食後の挨拶「御馳走様」
気持ちが溢れてしまっていると感じる日本語があります。「御馳走様」「御苦労様」「御疲れ様」。「御」か「様」、どちらかをつければ敬語にはなるのに、「どちらかだけでは、足りない!だから両方つけます!」となったのでしょうか。目の前にあるものを用意する為にどれほどのお手間やご苦労があったのかを想像すると、「御」も「様」も付けずにはいられなかったのでしょう。そう想像すると、何も「あたりまえ」にあるものはないと気づくことができます。
食後の挨拶「御馳走様」の「馳走」は「奔走する」という意味で、冷蔵庫もない時代に、お客様の為に美味しい食べ物を求めて駆け回った様子を表わしています。大変な思いをして食事の準備をしてくれた人への感謝と敬意を込めて「馳走」に「御」と「様」を付け、食後に「御馳走様」と言うようになったと伝わっています。
「馳走」は、仏教の言葉に由来しています。仏教や仏教徒を守護する神様のお一人に韋駄天様がいらっしゃいます。足の速い人を「韋駄天のようだ」「韋駄天走り」と言うことがありますが、それは、御釈迦様の遺骨が盗まれた時、韋駄天様が追いかけて取り戻したことから、足が速い人のことを「韋駄天」と言うようになったとのことです。その韋駄天様が御釈迦様の為に駆け回って食材を集めてきたという話があります。そのことから仏教では広く解釈し、料理だけではなく、他の人の為に奔走し、苦しんでいる人を助けることを「馳走」と言います。現在は料理で人をもてなす意味で使われるようになり、転じて、料理そのものを指す言葉となりました。大変な思いをして食事を用意するのは、相手への感謝や思いやりの気持ちがあればこそ。「馳走」は、「何とか喜んでもらいたい」と大切な人の喜ぶ顔を思い浮かべ、手間暇を惜しまず、ひたすらに相手のお幸せを願う「利他の精神」から生まれている言葉なのです。

(2/11/2026)

筆者・森 日和
禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com
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