
第四十二回
人生の通過儀礼である「成年の儀式」
七五三、入学式、卒業式、結婚式なども
9月6日に悠仁親王殿下のご成年式が執り行われました。成年式とは、男性皇族が成年を迎えた時に行われる一連の儀式のことで、秋篠宮皇嗣殿下以来40年ぶりのことでした。成年式は古来『元服』といい、古くは西暦714年に第45代聖武天皇が皇太子として「元服」したという記録が残っています。その後、平安時代に元服の儀式の流れなどが整えられ、江戸時代末期まで続きます。明治に入り、成年の儀式は「成年式」となり今に至っています。
一般の人々の暮らしにも、成人を迎える儀式である成人式をはじめ、七五三や結婚式など、多くの「人生の通過儀礼」があります。
通過儀礼の目的は時宜相応に覚悟をすることです。決断ではなく覚悟。「決断」は、「決めて断つ」と書きます。つまり、手放すということです。決断するまでは悩んだり、苦しむことがありますが、それはその決断する対象への執着からの苦しみだったかもしれません。しかし、「決断したら楽になった」というご経験はないでしょうか。手放せば身軽となり楽にもなりますし、手が空くので他を掴むこともできます。時に決断が必要なこともあるでしょう。
しかし、通過儀礼は「覚悟」の機会。覚悟は手放さず、背負います。成人式では、「今日から大人」と自分の人生に対して責任を負います。結婚式は自分の人生だけではなく、相手の人生、相手のご家族の人生、そしてこれから生まれ来る子どもたちの人生に責任を負うことを誓い、覚悟します。覚悟は容易なことではありませんが、だからこそ人としての厚みが増すのではないかと思います。
11月15日は七五三の日です。子どもの無事の成長を祈る儀式ですが、小さな子どもたちであっても儀式の中に大人への覚悟をする場面があります。
覚悟は決して楽なことではありませんが、振り返るとその覚悟があったおかげでとおっしゃる方が多いと感じます。
人生において通過儀礼はとても重要なもの。その意味が薄らぐことがないように、しっかりとお伝えして参りたいと思います。

(9/25/2025)

筆者・森 日和
禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com









