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飲酒運転で警察車両とカーチェイスをした後、アメリカ・ロサンゼルスで刑務所暮らしをすることになった日本人。
サム(仮)による一年間の服役実録記。
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ただしやはりここは凶悪刑務所なのだなと思うことも多々あった。
例えば自分の隣のベッドで寝ていた、いつもニコニコと優しい笑みを浮かべている60歳代の男性がいたのだが、「お前は何をしてここに来たんだと?」聞かれたので「酒を飲んで車を運転して、停止命令を振り切って警察とカーチェイスをしたんだ」って言うと、「そうか、それは良いことをしたね」と笑いながら、「で、逃げ切ったのか?」と聞いてくる。ので、「いや捕まったからココに居るんだよ笑」
「ついでに車から降りたら、いきなりテイザー銃で打たれて、そのままボコボコにされたよ笑。」そう答えると、「そうかそれは運が良かったなぁ、実弾を食らわなかった分。」・・・確かに。「でもその程度の事件だったらココには そんなに長くは居なくていいねぇ、俺はもう25年も入っているよ」と言う。
死刑制度の無い州では懲役150年とか言う刑はザラにあるが、恩赦も出るので実際には相当の犯罪を犯さない限り何十年も刑務所暮らしをする人はそう多くは無い。この恩赦のバンバン出るアメリカの刑務所で25年って・・・
大体何をしたかは想像がつくが、やはり聞かない訳には行かなくて、「あんたは何をしたんだい」そう聞いて見た。いつもニコニコと微笑んでいて俺にも、なにくれと無く優しく接してくれる彼が一瞬だけ目を細めると、
「五人ほどね、殺したんだ」って
へ~・・・
そりゃあ良い事ををしたね…とは言え無かった。
そしてまた別の隣人がやってきて言うのだ、「俺は銃撃戦をやって捕まっちゃったけど、まだ頭の中に鉄砲の弾が入っているんだよね」どうやってかは知らないが、確かに頭蓋骨と皮膚の間にボコッとした塊が見えた。
ほ~。さうなんですね~(・・;)
住む世界が違うってこういうことを言うのかな、でもその世界に俺は今いるんだよなぁ。犯罪歴はともかく、この人たちはほんとに穏やかで優しかった。だからこの刑務所で俺は生き残れるのか?とかそういう心配をする必要は何もなかったのだ、そうこの時までは。
前にも書いたが約2週間後俺はこの刑務所内の天国から地獄へと突き落とされることになるのである。
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(4/14/2022)
プロフィール
鹿児島県出身。国際結婚を果たしてラスベガスで生活したのち、ロサンゼルスに移住。
同コラムでは、犯してしまった犯罪とそれを償うための服役生活についてを明かすが、いたって普通の一般市民。二児の父であり、飲食業界に勤める。
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