VOL.17 刑務所内で先生の立ち場となった俺。朝起きると貢物の嵐。

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飲酒運転で警察車両とカーチェイスをした後、アメリカ・ロサンゼルスで刑務所暮らしをすることになった日本人。
サム(仮)による一年間の服役実録記。

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すぐそばにあった食事用の、地面に固定されたステンレスのテーブルの表面を指だけでパーンと強く叩いたのだ、コレは拳ではだめなのだ、指でやることに意味がある。大きな音がして皆がこっちを見る、(内心…超〜痛いのだが、男の子は我慢なのだった笑。)

 

平気な素振りをしてその指を立てたまま彼らに歩み寄り、そして静かにこう言った。

「お前さんたちは、多分だが、ナイフあるいは拳銃などを使用して、人を傷つけあるいは殺傷をしてここにきているんだろう?」

 

「おうそうだぜ、俺は何人殺したぜ。」と言う奴らばかりだ。

 

そこで俺は言う、「俺はこの指1本で相手を倒すことができるのだ」と。

そしておもむろに前にいた奴のこめかみをゆっくりと軽く指で突いてやる。(早く動いたら相手も反応するからね)

 

「今何をした?」彼はうろたえて聞いてくる。

 

「人体にはなぁ、急所と呼ばれる場所が何箇所もあるんだ。眼球、金的もそうだし、みぞおちやこめかみ、鼻と唇の間の人中や喉仏、こういった場所以外にも秘孔と呼ばれる急所があるのだよ。」「そしてその急所を突けば、その瞬間は大したことがなくても数週間後、数ヶ月、あるいは数年後にはそこから神経が麻痺して腐ってきて、しまいには死に至ることもあるのだよ。さらにはだ、武器を用いない暗殺技術なので証拠すら残らないんだよ。」

 

そうあの有名な少年漫画、北斗の拳に出てくる様なセリフをここぞとばかり、のたまったのだ笑。

 

これはまるっきり嘘と言うことでも無い。本当の武道の達人ともなれば、そういうこともできるのかもしれない。

ただ、まぁ、自分の場合は八割方というか概ねブラフ(嘘)であることに間違いは無いのだが笑笑。

 

そして自分に秘孔を突かれた?彼はと言うと、情けない声を出して、「俺は、大丈夫なのか?」と聞いてくる。

なので俺は言ってやる。「心配ない。今のは軽くしかも秘孔をずらしているから問題はない」と笑。

 

実を言うとこの話は、子供の頃読んだことがある、空手バカ1代と言う漫画本で紹介されていた逸話なのだ笑笑。

 

危機に面して、とっさに閃いて使ってみたのだが、自分ではその場を収めるためにやった半ば冗談のつもりではあったのだが、

次の日の朝、10人余りの人間が手に手に朝食のバナナやリンゴを持ってきて、「センセイ弟子にしてくれ!俺にも教えてくれ!」と人種関係なく人々が殺到し、刑務所の中で一風変った道場を開くことになったのだった。

 

おかげで人種的にはアザー(その他)だった自分もいきなりのメジャー昇格。どのグループからも一目置かれる存在となったのも確かだった。だからといって全ての危険性が排除されたわけではないのだが。

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(6/9/2022)

プロフィール

鹿児島県出身。国際結婚を果たしてラスベガスで生活したのち、ロサンゼルスに移住。

同コラムでは、犯してしまった犯罪とそれを償うための服役生活についてを明かすが、いたって普通の一般市民。二児の父であり、飲食業界に勤める。

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