VOL.11 “Lawyers are liars.“ 俺を弁護したのはお上からの免許を貰った泥棒

.

.

飲酒運転で警察車両とカーチェイスをした後、アメリカ・ロサンゼルスで刑務所暮らしをすることになった日本人。
サム(仮)による一年間の服役実録記。

.

 

.

話しは少し元に戻るが、この最強に凶悪な刑務所でもトップレベルに当たる凶悪犯収容房での暮らしを書く前に当たって、刑務所側の送迎移動ミスでこの最悪な部屋に来ることとなった、その切っ掛けになった1番最初の裁判、罪状認否のときの事について話を戻して書いてみたいと思う。

 

これがまぁ記念すべき?第一回目の裁判だった。(この後約1年以上にわたって何十回となく審議を連ねることになる)

 

実は密かに、自分はこの日(一回目の裁判時)にとりあえずの仮釈放を許され、家に帰れるんではないかと言う、密かな、しかし強い期待があった。なぜならば、知り合いの紹介で凄く腕の良いと言う弁護士を雇ったからであるし、彼は出廷前に初めて私に会いに来た時に「この程度の事件なら今日にでも出せるよ」と豪語していたし。そして彼の身なりも見るからに高級そうなスーツに身を包んだビシッとした出立ちで、自分以上に有能な弁護士はこの世には存在しないと言わんばかりの、自信の塊の様な、ある意味、傲慢とさえも言える態度でいたからだ。だから人柄的には横柄さを感じたものの、逆にこの時点では、「おお〜すごい力を持った弁護士なんだな、頼もしい」と期待に胸を膨らませもしたのである。

 

しかし、法廷内での彼のオーラみたいなものは一瞬にして掻き消え、…そればかりか、裁判長に対しては遜った(へりくだった)ような態度で、しかも事前準備も何もしてなかったのであろう事が分かる、しどろもどろな弁舌。なので仮釈放の申請も裁判長からあっさりと撥ねつけられる始末。

 

この弁護士、本来なら何万ドルと掛かる凄腕弁護士なのだそうだが、知り合いの紹介と言う事もあり、成功まで全て含めて五千ドル(当家に取っては大金である)でやってくれると言う約束で雇ったのだが…。良くも悪くも、人を外見のみで判断しちゃいけないなと言う所の典型的な例である笑。まぁ結果的に言えば戦略も無ければ、何〜にもしない、ただただ裁判は進んで行くが出れそうな見込みは全く無い。

 

その後の裁判でも、我々弱い立場の依頼人の前でこそ傲岸不遜とも言える程の高慢チキで偉そうな態度なのに、裁判においては裁判官や検察官の言葉をただ自分に伝えるだけの何の策もない小物振りを遺憾なく発揮してくれるのだ笑笑。(…よくよく考えるに、あれからもうかなりの歳月が流れておるのだが、かなりのご立腹でしたなぁ、自分も)もう今となっては何の恨みも感慨もないのだが笑。

 

そして裁判が次のステージに移り変わる時になってから、あと二万ドル出さなければ弁護を続ける事は出来ないとか言い出す始末。「最初の約束と違うじゃないか。しかも、何〜にもしても無いし。」そう言うと、今度は大丈夫だとか、後一万ドルでも良いからとか抜かして来るのだ。一体どの口が抜かしやがる笑。次の法廷に出廷する直前まで返事をしなかったのだが、妻を通じてあと五千ドルで良いなどと言って来るのだから始末に負えない。既に払ってしまった五千ドルは惜しいけど、弁護士は解任して、いわゆる国選弁護人を雇って貰う事にしたのだった。

 

自分の様な、こういったケースの場合は実刑判決は免れないというのが通常の判例であるし、だけど弁護士の手腕によっては執行猶予を得たり、最悪刑期を縮小させることもできるようだ。だけど、「藁にも縋りたい」そういった気持ちの被告人の弱い立場というか、足元を見たやり方で金ばかりを請求してくる弁護士と言う奴らは、お上からの資格、免許を貰った盗っ人(泥棒)と言っても過言ではない。もちろんこれはすべての弁護士さんがそうだとは言わないが。

 

自分達も盗っ人に追い銭を投げる程リッチでも無いし、この弁護士は俺たちの判断に対してめちゃくちゃ腹を立てていたそうだが、(金を取りっぱぐれた事に対してだろうけど笑)

 

盗っ人猛々しいとはこの事だろう。英語で弁護士の事をlawyerと言うが、「lawyers are liars 」ロイヤーはライヤー(弁護士は嘘つき/詐欺師だ)と言う言葉があるくらいだ。これもまたすべての弁護士さんがそうであるとは言わないが笑。

中には高潔な使命と意志を持ち、誠実なる姿勢でお仕事をなされる弁護士さんもおられるのだ。そして、そのあとを引き継いだ国選弁護人の活躍振りは最高であったのだ。

 

30歳代の女性弁護士である彼女は国から一定の報酬しか出ないパブリックlawyer(国選弁護人)としてなのに、被告人である自分の身に寄り添うように親身になって、いろいろな策を立てて弁護に尽力してくれたのだ。

 

結果を言えば実刑判決を受けることとなったのだが彼女のおかげで刑期も半分以下に減らすことができたし、彼女の裁判を長引かせたりの作戦や弁護のおかげで、自分が又いなくなった後も家族が暮らし生きていく為の道を整えるための準備期間もできたのだった。

.

(4/28/2022)

プロフィール

鹿児島県出身。国際結婚を果たしてラスベガスで生活したのち、ロサンゼルスに移住。

同コラムでは、犯してしまった犯罪とそれを償うための服役生活についてを明かすが、いたって普通の一般市民。二児の父であり、飲食業界に勤める。

.

.

☞コラムバックナンバー

☞コラムを第一話から読む

☞姉妹コラム「あの時何が起こった」を読む

.

ホームに戻る

.

.

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。