VOL.10 バスに乗り遅れ始まった凶悪刑務所(super MAX)での暮らし

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飲酒運転で警察車両とカーチェイスをした後、アメリカ・ロサンゼルスで刑務所暮らしをすることになった日本人。
サム(仮)による一年間の服役実録記。

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前に書いた様に結局この刑務所内でいえば天国の様な部屋から地獄の部屋へと移らざるを得ないキッカケとなったのが定期的な裁判の為に裁判所に出廷しなければならなかった時の事だった。

 

裁判自体は朝の9時ぐらいから始まるのだが、我々は移送時間なども含めて朝方の3時や4時に叩き起こされる、そして朝飯代りのパンやスナック類を持たされて数珠繋ぎになりバスへと乗り込むのだ、バスはツインタワー含め、あちこちの拘置所を巡って出廷人を拾ってから裁判所へと向かう。裁判所に着いたら地下駐車場へとそのまま入り、裁判所の地下にある留置人専用のブタ箱へと移される。

 

ここからが又果てしなく長い待ち時間の始まりなのだ。運良く、その日に仮釈放されたり、或いはたったの1日で結審する人達はラッキーだ。大抵の場合一回の裁判で終わる訳も無く、自分の場合で言えばその日は罪状認否(やった罪を認めるか否か)だけであった。このときの事はまた後ほど書くことにしよう。

 

そしてそのまま、全員の審議が終わるまで地下房で待たされ、そして又バスに乗って拘置所へと帰るのだ。そしてその日に一旦ツインタワーまで行って、そこでバスを乗り換えてからスーパーマックスの、他に比べればだが、ほっと一息つける我が初老チームの集まる部屋へと帰る筈、…だったのだが、

 

自分は夕方七時(時計が無いから大体の予想だが)ぐらいから朝七時過ぎまでずっと、石のベンチと剥き出しのトイレしかないツインタワーの留置所で待ち続けたのだが、乗り換えるはずのバスがいつまでも来ないのだ、というか誰も俺を連れにこないのだ。

後から分かった事は刑務所側のなんらかのミスで俺を乗せ忘れたらしいのだ笑。なんと無責任な輩ばかりであろうか。…日本などではあり得ない話しであろうはず笑笑。

 

次の日になってようやくバスに乗り込めた俺は、こんなこともあるんだなぁ、でも良いや、やっと帰れると思っていたのも束の間、帰り着いた俺が連れて行かれた場所はあまり見覚えの無い場所だった。

 

ポリスに「ココは俺の部屋のあるビルじゃあ無いよ」と言うと、もうお前のいた部屋は満杯だからこっちに移したんだと言う、数少ない荷物も既に移してあるらしい。そしてその部屋の前に立った俺は愕然としてしまった。

 

ここの拘置所の部屋の、鉄格子の入り口の上には、ある番号がふってある、部屋番号では無い、例えばレベル1〜2、レベル3〜5、レベル6〜8、レベル8〜10、と言う風にである、レベル1〜5。5〜10と言うところもあるようだが此れは何かと言うと、

簡単に言えば、その部屋の囚人の凶悪度のレベルを数字で表しているのだ。

 

もちろん数字が上がれば凶悪度も増すと言うカラクリ。比較的おとなしい窃盗であるとか詐欺罪など大人しめの受刑者は1から始まる低めの番号の部屋に入れられる。そして殺人などの凶悪事件を起こした受刑者や、非常に好戦的で、だれかれ構うことなく噛みつき回り、ポリスにさえも平気で暴言を吐き逆らう様な奴や、ギャングの出身者など(日本で言うヤクザ屋さんである)はナンバーが上の部屋に入れられる。

 

俺の元部屋はもちろんレベル1〜2、そして今、目の前にある数字はレベル8。

 

…ほぼトップレベルじゃねーか😱

 

しかも鉄格子の中には二十代〜三十代後半の若者達ばかり、全身に入れ墨どころか、首から顔中に至るまで地肌が全く見えない程ビッシリと入ったタトゥー、そしてその頬には無数の涙の粒を象ったタトゥー。此れは殺した数とか身内が死んだ数だけ入れると聞いた…

 

顔の目ん玉以外のところ全てに、ピエロの化粧を施したようなタトゥーがびっしりと入っている。そんな奴が何人も見受けられる。気の弱い女性などであれば見ただけで失神しそうな光景だ。

 

ここアメリカでもカリフォルニアでは、普通の若い女性や男性、年寄りに至るまで、普通の一般の方でもファッション感覚で気軽にタトゥーを入れている。タトゥー天国と言える街である。カリフォルニアのビーチ沿いの観光地などにはタトゥー屋さんが軒を連ねていたりもする。だけど、そんなタトゥーが当たり前のようなお国柄のアメリカでも、さすがにここまでの人は俺達一般的な生活の場では、ついぞお見かけしたことがない。

 

あの、、、…あなたは一般社会ではどうやって生活をしているのですか?

と思わず聞きたくなる。この入れ墨がびっしりと入った顔で普通のスーパーマーケットなどに入ったら、流石のタトゥー慣れしているアメリカ人でもおったまげる事請け合いだろう。やはり我々のような一般的な生活をする人間とはかけ離れた世界に住む、強盗、殺人、ドラッグ、売春etc、そういった犯罪が常に身近にあり、それに手を染めながら、しかし、そうやってしか生きていけない闇の世界の住人なのだろう。

 

そしてこの日から俺の一瞬たりとも気の抜けない刑務所暮らしが始まったのだ。ほぼ24時間とも言える騒音(叫び喚き散らす声)での眠れない日々も又。

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(4/21/2022)

プロフィール

鹿児島県出身。国際結婚を果たしてラスベガスで生活したのち、ロサンゼルスに移住。

同コラムでは、犯してしまった犯罪とそれを償うための服役生活についてを明かすが、いたって普通の一般市民。二児の父であり、飲食業界に勤める。

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