VOL.13 囚人だけの世界に君臨する3人のボス。目をつけられるとリンチされる。

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飲酒運転で警察車両とカーチェイスをした後、アメリカ・ロサンゼルスで刑務所暮らしをすることになった日本人。
サム(仮)による一年間の服役実録記。

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さて、話をまた元に戻してこの凶悪刑務所でもトップレベルの犯罪者が集まる部屋での暮らしについて語ろうかと思う。

 

凶悪犯の集う刑務所の中とは言え、やはりルールは存在する。それも刑務所側からお仕着せられるルールではなく犯罪者たちが独自に守っているルールである。

 

まず、どこの房に入っても大体は3人のボスが存在する。

 

昔風に言えば牢名主のようなものか。なぜ3人かと言うと、大体大まかにだが3つの人種に分けられるからなのだ。白人種、黒人種、そしてスパニッシュ(種)。決して洒落ではありませんが笑。

 

最初ポリスに連れてこられて部屋に入るわけだが部屋に入った瞬間そこからはもう囚人だけの世界となる。逃げ場は一切無い。ある意味、ポリスといる時が1番安全だ。自分も部屋に入るなり、世話役のような男が近づいてきてお前はチャイニーズか?と聞いてくる。「ノーアイムジャパニーズ。」そう答えると、3人のボスの所へ連れていかれて自己紹介が始まる、彼ら3人がこの部屋で起こる一切の問題や揉め事を管理する立場にあると言うことだ。

 

基本的にはこの3人のボス以外の人種間の交流は無い。眠る場所や使うシャワーやトイレ、食事する場所も厳密に分かれている。人種間の対立や揉め事があったときにだけこの3人の牢名主が話し合って問題を解決するのだ。

 

「日本人は珍しいなぁ。(後で聞いたことだが約7000人の収容者中日本人は俺1人であったらしい笑)

何をやって入ってきた?」と聞かれるので、「警察車両とカーチェイスをやっちまったんだ。最後にテーザー銃で撃たれてこのザマだよ。」そう答えると、あれは痛ぇな〜、俺も何回もやられたよと笑っていた。

 

話しは少しく外れるが、この最初の面談、いわゆる顔通しの時に、嘘を言ったり舐められまいとしてかっこつけて大物振ったりしてはいけない。自分がここに至るまでに見聞きした経験だけでもそうだが、生意気な態度を取ったり、何の事情があってか知らないがボスたちの機嫌を損ねることを言って、私刑(リンチ)にさらされている奴を何人も見てきた。その後も何回となくこのリンチを目にしてきたが、対象者が、なに人であれ3人のボスの話し合いの上で行われる。

 

ただし自分たちの人種間だけでのリンチとなればまた話は違うし、他の人種のボスも、誰も彼もが見てみるふりをするのが暗黙の決まりである。

 

リンチをするときには正面のポリスからは見えないように人で壁を作り、奥の見え難い場所でやはり人の壁を作ってその中で何人もで口などを押さえつけて声を出させないようにして袋叩きにするのだ。初めて目にしたと言うか聞いた時はググゥっと言うくぐもった声と、ドガ、ドスと何かを殴る様な音が聞こえ、それが数分続いてる間、周りの人間がカモフラージュのために歌を歌ったり騒いだりしていた。数分後に手の甲を真っ赤に腫らした男たちが何人もその人の輪の中から出てきた。自分は最初、興味本位で見に行こうと動きかけた時だったが、黒人のボスに目配せをされ、行ってはいけないし見てもいけないと止められた。もし行ったら巻き添えを食って殺されていたかもしれない。

 

その後そのリンチされていた男は、動かなくなりそのまま放置されていたようだが、そのまま死んで事故死扱いとなったのか、病院送りになったのか、他に移されたのかは分からない。ただだれも逮捕はされてないし表面的には日常のままだった。

 

こういった凄惨な粛清と言うかリンチの現場等を目にするとだが、若い頃から喧嘩なり何なりと、割とヤンチャな人生を生きて来て、それなりに数々の修羅場をくぐってきたつもり(何しろ若い頃の話ではあるが、アメリカに来てからも銃口を突きつけられたことも1度や2度では済まないのだから笑)の自分でも、やはり怖いものではある。

 

しかし、だからといってあまりへりくだった態度をとると今度は舐められる。そして奴隷のような暮らしを強いられる事となる。この兼ね合いが難しいのだ。

 

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(5/12/2022)

プロフィール

鹿児島県出身。国際結婚を果たしてラスベガスで生活したのち、ロサンゼルスに移住。

同コラムでは、犯してしまった犯罪とそれを償うための服役生活についてを明かすが、いたって普通の一般市民。二児の父であり、飲食業界に勤める。

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