VOL.15 袋ラーメンが$1のかわり。刑務所内でもお金は稼げる。

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飲酒運転で警察車両とカーチェイスをした後、アメリカ・ロサンゼルスで刑務所暮らしをすることになった日本人。
サム(仮)による一年間の服役実録記。

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刑務所内ではお金を持つ事はできない。その代わり、週に1度、刑務所サイドに預けてあるお金の中を使って許可された様々な物品を買うことができる。自分が居たところでは、壁に貼ってある紙に食べ物・お菓子類・コーヒー・歯磨きセット・石鹸などの値段とナンバーが載っており、それを手渡されたマークシートのようなものに書き込んでいくのだ。注文したものは翌週届くことになる。もちろんお金のない者たちのために最低限生きるためのものは、刑務所から支給されるのだが、あくまでも最低限のものでしかない。

 

こういった中に住んでいると、楽しみといえば食べることぐらいである。凶悪犯罪者といえどもそれは変わりなく皆この購買日とその支給日を楽しみに心待ちにしているのだ。

 

毎週水曜日だったか?その購買品が入る日は、房内がちょっとした市場?の様相を示すことになる。主な購買品だったコーヒーは袋入りのインスタントコーヒーであった。房内に付いているあまり高温にならない程度の湯沸かし器で作ることができた。

 

後は手紙を書くための文房具品を含む生活用品もあった購入することができた。

 

中でも1番人気と言っていいほどの大人気で、必ずみんなが買う商品があった。そしてその商品は、皆が持っていることから通貨がわりとして物々交換に使っていたのでもある。それこそが、我が日本の誇るマルちゃんの袋入りインスタントラーメンなのである。これは通常のアメリカのスーパーマーケットでもどこでも、一個50セントにも満たない値段で売っているやつなのだが、スパイシーとかチキンやビーフテイストなどいろんな味のものが売られている。

 

スパニッシュ系が多いせいか1番人気だったのは確か緑の袋に入ったスパイシーテイストのやつだったと思う、

 

またこれを、どうやって食べるかと言うのが、なかなか衝撃なのではないだろうか。

  • まず袋を開けてスパイスだけ取り出して四角いままの麺をそのまま袋の中に残してそこにお湯を注ぐ。
  • お湯がこぼれないようにそのまま立てた状態で数分間保管し水を吸って柔らかくなった麺を取り出す。
  • そしてそれを朝食や昼食に出る食パンの上にのせてそこにマヨネーズやスパイスを乗せる。
  • もう1つ、ここにしかない面白い調味料としては、いわゆる袋菓子、スパイシーティストのポテトチップやコーンスナックなどを袋を開けずに地面に何回も袋ごと叩きつけるのだ、そしてバラバラの粉々になった中身をスパイスがわりに麺の上などにかけるのだ。

 

これが割とうまい😋

食パンと麺といろんな味が複雑に混じりあったスパイスの中に砕いたお菓子のカリカリの食感が合うのだ笑。

 

ただし、お金のない者、何も持たず、持たざる者達はこういうわけにはいかない。

金のないやつは金を作る必要に駆られる。だから冒頭で触れた”市場”を開く事になる。ここでいう金とは袋ラーメンのことであ理、大体1袋が1ドルから2ドルの計算になる。

 

稼ぎ方はいろいろである。例えばベッドシーツや支給される服、靴下やパンツ等の生地をほぐして糸を取り出し、それを1本1本丁寧に紡いで、太い糸にするのだ。そしてその糸をさらに編み込んで十字架のネックレスや指輪を作り、それを自分のベッドの上に商品として並べておくのだ。小さいものは袋ラーメン1つ、大作になればラーメン3つ分とかいろいろあるのだ。

 

他にも彫り師だと名乗る奴が、タトゥーの図柄の原画を紙に書いたのを並べていたり、ティッシュや紙を織り込んで作ったバラの花束であったりとか、様々なものが売られていた。生活力というかその器用さには、眼を見張るものがある。中には字の書けない奴もいるため、家族への手紙を代行して書いてくれる奴もいる。

 

他にも賭け事をして他人から巻き上げるギャンブラーも居れば、マッサージなどをして稼ぐ奴もいる。そして対して芸のない奴らは、自ら強そうな奴の下にくっついて行き、媚びへつらってそいつのおこぼれにあずかろうとする。そして自然と派閥的なものが出来上がっていくわけだがこれは実社会の組織とも大して変わりは無いことなのだろう。

 

もう一つ面白いことといえば、

ここは凶悪刑務所であり、入っている人間はもちろん犯罪者である。その中には窃盗の常習者であったり強盗犯人であったりという連中も少なからずいる。だが、自分が知っている限りに於いて、部屋内で誰かの物がなくなったとか盗まれたとかいう事はほとんど無かった。誰かが食料をため込んでいても、「俺にも分けてくれよ」と聞いてくる奴はいても、黙ってそれを取るような奴は1人もいなかった。裏切り者のレッテルを貼られてリンチされることを恐れているのだ。

 

ただし、収容者同士の盗みは無くても、刑務所の施設内の備品とかシーツとか服とかは、スキあらばポリスの目を盗んで無断拝借する輩はたくさんいた笑。

 

刑務所内と言うのは、食べ物が腐らないように、あるいは病気が蔓延しないようにという配慮からか、ひどく寒いのだ。それなのにシーツは1人1枚しか支給されない。枕もない。なのでどこからか余分なシーツを仕入れて来て(もちろん無断拝借である)それを丸めて枕にしたり、シーツを二枚重ねにしして暖を取ろうとするのだ。

 

時々来るポリスのパトロールの時間にそれが見つかレバ、罰こそはないが、余分な物はポリス達に持っていかれることになる。それでもまたどこからか盗んで来ては同じことを繰り返すのだ。まるでイタチごっこである。

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(5/26/2022)

プロフィール

鹿児島県出身。国際結婚を果たしてラスベガスで生活したのち、ロサンゼルスに移住。

同コラムでは、犯してしまった犯罪とそれを償うための服役生活についてを明かすが、いたって普通の一般市民。二児の父であり、飲食業界に勤める。

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