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飲酒運転で警察車両とカーチェイスをした後、アメリカ・ロサンゼルスで刑務所暮らしをすることになった日本人。
サム(仮)による一年間の服役実録記。
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囚人だけの世界に君臨する3人のボス。彼らにしても大概の犯罪者は娑婆に出ればそれなりの顔役であったり、ギャングの仲間がいたりする場合もあるので、多少なりとも用心する部分もあるようだった。だから俺のような日本人であれば組織的なつながりも持っていないだろうし、と言うことで、安心すると同時になめてかかって威圧的な態度で接してくる場合もある。
もし仮に自分が日本のヤクザの幹部であったとしても、ここでは屁のつっぱりにもならないのだ。
刑務所といえども一般社会と同じで、やはりここでも求められるのは、その肩書や犯罪云々のことではなくて、その人の持つ人間性なのだ。だから、刑務所の中で生き抜く上で1番大事なことはと言えば、そう、そいつが信頼出来るかどうかと言う事だ、またどれだけ自分が信頼できる仲間を増やせるかと言うのも大事なことになる。
曰くこいつは信用できる奴なのか?ポリス側なのか?俺たち側なのか?信頼できるのか?それともチクリ野郎なのか?喋り方や行動を見て吟味される。何しろ刑務所内では、違法薬物でも何でも手に入れようと思えば入れられる。酒も密造する、様々な違法行為がまかり通る。だから信頼できない奴は仲間外れにされるし、チクるやつはリンチされる。
話しを戻して行くと、俺は3人のボスに向かって、「アンタらが牢名主なんだね。」と日本語で伝えてみた。「ローナヌシ?なんだそりゃ?」意味を伝えてやると、「oh I amローナヌシ」と喜んでいた、とりあえず彼らは自分に好印象を持ってくれたようには見えた。その後、当たり前のように俺は黒人のグループに入ることになった。これはどこに行ってもそうだが日本人だと言うと黒人と一緒にされるのだ。いわゆる有色人種、「カラード」と言う扱いになるのだろう。俺たち日本人は見た目はメキシカンに近いと思うのだがなぁ。でも無いか笑。
いずれにせよ、この黒人グループに入る事は、自分にとっては最高にラッキーなことではあった。なぜなら、皆さん意外に思う方も多いと思うのだが、刑務所内の人種別の犯罪者数の割合だと、黒人種はそれほど多くないのだ、
自分がいた雑居房で言えば、およそ70人余りの収容者数の中で黒人種は自分含めて11人しかいなかったのだ、1番多いのがスパニッシュで約50人、そして白人種もそれほど多くなく10人前後である。
これが何を意味するかと言うと、房内の縄張り、つまりテリトリーと関係することになる、前にも刑務所内では、およそ3種の人種に分かれると書いたが、実質的には黒人VS白人+スパニッシュと言う図式が成り立つ。
どういうことかと言うと、房内では、眠る場所や空間だけでなく、食事をする場所や、トイレ、シャワーに至るまで相手の縄張りに踏み込む事は一切許されないのだ。その縄張りのそばを通ることさえ憚られるのだ。そして、全体的に見て、そこはかなり大きな部屋ではあるのだが、シャワー室は全部で2つ。トイレも全部で4つしかないのだ。そしてその半分が黒人種の縄張りとなる。
そしてその縄張りを侵せばリンチの対象となる事にもなるのだ。だから食事するテーブルもシャワーもトイレも自分たちの縄張り内のものだけしか使えない事となる。
つまり私たち「黒人種」は10人余りの人数でシャワー1つとトイレ2つを、いつでも余裕を持って使う事が出来るが、白人+スパニッシュは60人近くの人数でシャワー1つとトイレ2つを使わなければならない。彼らがシャワーやトイレの順番待ちをしている時でもこちらは余裕を持っていつでも使うことができるわけだ、コレには大いに助かったものだった。そしてこの黒人種は凄まじくと言えるほど仲間意識が強く、一見肌の色の違う俺をも立派に仲間として受け入れてくれ、大事にしてくれるのだった。
自分達も盗っ人に追い銭を投げる程リッチでも無いし、この弁護士は俺たちの判断に対してめちゃくちゃ腹を立てていたそうだが、(金を取りっぱぐれた事に対してだろうけど笑)
盗っ人猛々しいとはこの事だろう。英語で弁護士の事をlawyerと言うが、「lawyers are liars 」ロイヤーはライヤー(弁護士は嘘つき/詐欺師だ)と言う言葉があるくらいだ。これもまたすべての弁護士さんがそうであるとは言わないが笑。
中には高潔な使命と意志を持ち、誠実なる姿勢でお仕事をなされる弁護士さんもおられるのだ。そして、そのあとを引き継いだ国選弁護人の活躍振りは最高であったのだ。
30歳代の女性弁護士である彼女は国から一定の報酬しか出ないパブリックlawyer(国選弁護人)としてなのに、被告人である自分の身に寄り添うように親身になって、いろいろな策を立てて弁護に尽力してくれたのだ。
結果を言えば実刑判決を受けることとなったのだが彼女のおかげで刑期も半分以下に減らすことができたし、彼女の裁判を長引かせたりの作戦や弁護のおかげで、自分が又いなくなった後も家族が暮らし生きていく為の道を整えるための準備期間もできたのだった。
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(5/19/2022)
プロフィール
鹿児島県出身。国際結婚を果たしてラスベガスで生活したのち、ロサンゼルスに移住。
同コラムでは、犯してしまった犯罪とそれを償うための服役生活についてを明かすが、いたって普通の一般市民。二児の父であり、飲食業界に勤める。
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