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飲酒運転で警察車両とカーチェイスをした後、アメリカ・ロサンゼルスで刑務所暮らしをすることになった日本人。
サム(仮)による一年間の服役実録記。
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皆さんに伝えたいことは、アメリカでは殺人事件のような大きな事件でも無罪を勝ち取るような凄腕弁護士が存在するが、飲酒や酒気帯びで捕まって、前者と量刑がさほど変わらない結果へと導いてくれるような弁護士もいるんだということ。自分の場合それにカーチェイスが加わった為、弁護士を立てる必要があった訳だが。
とにかく、俺が雇ったダメダメだったライヤーロイヤーの後任の女性弁護士には良くして頂いた。…だがこの時点で自分は既に2ヶ月余りを刑務所で過ごして居たのである。とりあえずの仮釈放に関してだが、この女性弁護士にしても既に1回目の裁判で仮釈放を却下されているのでは、もうどうしようもないと言う。…なので弁護士の力を使って釈放されるのは諦め、Beil Bond(ベイルボンド)と言うシステムを使う事にした。
アメリカで罪を犯した時や事件被疑者が逮捕された時に、保釈金何万ドルで拘束されましたなどとTVで良く聞く。この決められた保釈金さえ払えば、逮捕後でも、とりあえず裁判で刑が確定されるまでは、釈放が認められるのだ。(裁判や警察の調べに対しての証拠隠滅の恐れが有る者や、あの稀代の詐欺師、元日産社長のカルロスゴーンの様に逃亡の恐れのある者を覗くのだが。)
この保釈金は逃げたりしなければ裁判終了後に量刑がどうであれ100%(かな?)戻ってくるのだが、大概の場合はその犯した罪にもよるが、莫大な金額を課せられる訳なので、いかんせん我々一般市民には払う術がない。
そこで出てくるのが先程のbail bend(ベイルボンド)と言う制度なのである、簡単に言えば留置所や拘置所、刑務所等に留置された人間の保釈金を肩代わりしてくれる犯罪者専門の貸し銀行の様なものだ。通常の飲酒運転などであれば多分保釈金も数百ドルぐらいのモノと思うが、自分の場合それにカーチェイスが加味されるので、保釈金は十五万ドル(約一千五百万円なり)だったのである。
此れをbail bondに肩代わりして貰うのだが、仮釈放された時には成功報酬としてその保釈金の一割を納めなくてはならないのだ、ただ仮の釈放をされる為だけの150万円はかなり痛い。が、自分にはどんな事をしても出なければならない理由があった。
(余談だが、このbail bond を使って出た後に、そのまま逃亡などを図った場合は、お上からのお尋ね者として追われるだけでなく、この組織からも追われることになり、お金を返さなければ見せしめに殺される場合もあると言う、昔で言う賞金首扱いになって、殺し屋が追ってくると言う話だ)
とにかくどうしても、仮の釈放でも出なければならないその理由が、当時学生であった息子達と嫁さんが、自分が実刑判決を受け刑務所に入る形になっても暮らして生きて行ける方法を探さなくてはならなかったからなのだった。嫁さんがあちこちと奔走して成功報酬は一割の半分でも大丈夫と言うbailを見つけて来てくれたお陰で最初の収監から約半年近くになってようやく俺は取り敢えずの自由を手に入れた。最終的には仮釈放の中、1年余りの裁判を経て実刑判決を受けることになり、また刑務所へと戻っていくことになるのであるが。
それまでに自分が刑務所に行っても、なんとか家族が食べていく事が出来る手立てを整えることができたのは僥倖であった。
この約1年余りの仮釈放の期間中に、約1ヵ月に1回のペースでの裁判所通いとハーフウェイハウス(刑務所とお家の間)とも呼ばれる施設での寝泊まりや、飲酒やドラッグで捕まった人たちの集まるサークルへの参加や、罰金を払いながら週に1度顔を出さなければならない飲酒運転者が集まる学校でのミーティング。これらはみんな義務付けられているので、やらなければならないのだ。この期間も大変ではあったが面白いこともいっぱいあった。(法の抜け道的な事であるとか笑。)又機会があれば書いてみようと思うが、ここに書いてもいいのかどうかは、わからない笑笑。
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(5/5/2022)
プロフィール
鹿児島県出身。国際結婚を果たしてラスベガスで生活したのち、ロサンゼルスに移住。
同コラムでは、犯してしまった犯罪とそれを償うための服役生活についてを明かすが、いたって普通の一般市民。二児の父であり、飲食業界に勤める。
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