カリフォルニア経済が世界第4位に ── 日本を上回る成長力の秘密

筆者・志村 朋哉

南カリフォルニアを拠点に活動する日米バイリンガルジャーナリスト。オレンジ・カウンティ・レジスターなど、米地方紙に10年間勤務し、政治・経済からスポーツまで幅広く取材。大谷翔平のメジャー移籍後は、米メディアで唯一の大谷番記者を務めた。現在はフリーとして、日本メディアへの寄稿やテレビ出演を行い、深い分析とわかりやすい解説でアメリカの実情を日本に伝える。

通信027
カリフォルニア経済が世界第4位に ──
日本を上回る成長力の秘密

カリフォルニア州の経済規模が日本を上回り、もし一つの国だとすれば世界第4位に相当することを、ギャビン・ニューサム知事が発表し、日米で大きな話題となりました。

カリフォルニアの2024年の名目の州内総生産(GDP)は4兆1000億ドルで、ドル換算の日本のGDP(4兆200億ドル)を上回ったのです。GDPとは、その地域で1年間に作られたモノやサービスの「合計金額」のこと。つまり「物質的な豊かさ」を表す物差しです。今や、カリフォルニアより経済規模が大きいのは、アメリカ全体、中国、ドイツだけという状況になりました。

注目すべきは、経済の成長スピードの差です。カリフォルニアは6%と、アメリカ全体の5.3%、中国の2.6%、ドイツの2.9%を大きく上回っています。為替の影響で日本はドル換算だとGDPが減ってしまいました。円安ドル高が続いたことも、日本の経済規模が小さく見える原因になっています。

世界が夢見る場所
なぜアメリカの一つの州が、日本という国を超えるほどの経済力を持てるのでしょうか。

カリフォルニアには、人もお金もアイデアも自然と集まってくる魅力があります。一年中暖かい気候、スタンフォードやUCLAなどの名門大学、移民を受け入れる文化、そして豊かな自然。さらに、世界とつながる空港や港、広い道路網、安定した電気・水道などの生活基盤も整っています。こうした環境があるからこそ、「ここで夢を実現したい」と世界中から人が集まるのです。

その結果、アップル、グーグル、テスラといった世界を変える企業が次々と生まれ、優秀な人材とたくさんの投資資金が流れ込んでいます。また、IT産業だけでなく、ハリウッド映画、400種類以上の農作物を生産する農業など、様々な産業が発展しています。ニューサム知事も「カリフォルニアは世界の後を追うのではなく、リードしているのです」と自信をのぞかせています。

豊かさの光と影
カリフォルニアの経済が発展すれば、私たちにとってもチャンスが増えます。IT、観光、貿易など、いろいろな分野で仕事やビジネスの機会が広がるからです。日本企業がカリフォルニアに進出する動きも、さらに活発になるでしょう。

ただし、弊害もあります。経済が発展するにつれて、みなさんも肌で感じている通り、住宅価格や家賃、物価がどんどん上がっています。サンフランシスコやロサンゼルスでは、平均的な家が100万ドル以上するため、収入の少ない人たちは住む場所にも困っています。「経済が大きい=誰もが豊かに暮らせる」というわけではなく、高いスキルを持つ一部の人々に富が集中し、格差が広がっているのが現実です。

カリフォルニアに学ぶ
日本はこれまで「モノづくり」大国として発展してきましたが、AI(人工知能)など、これからの成長分野では遅れを取っていると指摘されています。カリフォルニアの成功は、日本に警鐘を鳴らすと同時に、参考になることもたくさんあります。

たとえば「違い」を「強み」に変える文化です。様々なバックグラウンドや考え方を持つ人たちが集まることで、新しいアイデアが生まれやすくなります。それと、失敗を恐れずにチャレンジする精神。カリフォルニアでは「失敗は成功への道」と考えられています。大学と企業が手を組んで新しい技術やビジネスを生み出す仕組みも見習うべきでしょう。

カリフォルニアと日本は、太平洋を挟んだ大切なパートナーです。私たち南カリフォルニアに住む日本人は、両者の架け橋となり、この関係をさらに深めていきたいですね。

(5/5/2025)

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