筆者・志村 朋哉
南カリフォルニアを拠点に活動する日米バイリンガルジャーナリスト。オレンジ・カウンティ・レジスターなど、米地方紙に10年間勤務し、政治・経済からスポーツまで幅広く取材。大谷翔平のメジャー移籍後は、米メディアで唯一の大谷番記者を務めた。現在はフリーとして、日本メディアへの寄稿やテレビ出演を行い、深い分析とわかりやすい解説でアメリカの実情を日本に伝える。
通信008
LAギャラクシー優勝!
輝いた吉田麻也のリーダーシップ
ロサンゼルスに住む日本人にとって、スポーツ観戦といえばやはり大谷翔平のいるドジャースと八村塁のいるレイカーズが中心になると思いますが、サッカーも忘れてはいけません。
土曜日には、米最高峰のプロリーグ、メジャーリーグ・サッカーの年間王者を決めるMLSカップ決勝がロサンゼルス近郊のカーソンで行われ、ロサンゼルス・ギャラクシーがニューヨーク・レッドブルズを2−1で下し、リーグ最多となる6度目の優勝を果たしました。そのギャラクシーの守備の要として、前日本代表主将の吉田麻也と元日本代表の山根視来も活躍しました。
私も息子がアーバインのクラブチームでサッカーをやっていて、学校の友達の影響でギャラクシーの司令塔リキ・プーチのファンになったことから、ギャラクシーの試合を見るようになりました。
ギャラクシーはMLSが創設された1996年から籍を置くクラブの一つです。かつては、サッカー界の英雄であるランドン・ドノバンがプレーし、デービッド・ベッカム、スティーヴン・ジェラード、ズラタン・イブラヒモビッチなどヨーロッパで大活躍したスーパースターも在籍していました。
ただし、現役終盤に差しかかったスター選手を中心に据えるスタイルは、レベルが上がってきたMLSでは通用しなくなり、ここ10年近くギャラクシーはプレーオフ出場もままならないくらい低迷していました。
そんな批判を受けてか、ギャラクシーは、吉田やスペインの名門FCバルセロナから若干22歳だったプーチを獲得。今季、13ゴール、15アシストでチームを牽引したプーチは、MLS史上最高選手になるかもしれないと言われるほどの存在です。身長170センチもないのに、卓越したボールさばきで試合の流れをコントロールする姿は、体の小さい息子にとっては良いお手本となっています。
今年は山根に加えて、ブラジル出身のガブリエル・ペックと、ガーナ出身のジョセフ・ペインシルという、あまり知られていなかった二人の若手ウィングを補強し、功を奏しました。
最近では、ギャラクシーやもう一つのMLSクラブであるロサンゼルスFCのグッズを身につけている人を街中で見かけるようになりました。「サッカー不毛の地」といわれ続けてきたアメリカでも、ついにサッカーが文化として根付きつつあることを感じます。
吉田のリーダシップ
ギャラクシーが優勝した翌日には、本拠地スタジアムで祝賀セレモニーが行われました。選手が順番にスピーチをしていき、山根と吉田も英語で挨拶をしました。山根は”We are the champion!”と雄叫びをあげた後、「ペンパイナッポーアッポーペン」ネタを披露し、会場の笑いをかっさらっていました。
感心したのは吉田のスピーチです。「ギャラクシーにはたくさんのリーダーがいますが、キャプテンは吉田麻也ただ一人」だと紹介されて最後にマイクを渡された吉田は、スタッフやチームメイト、家族、ファンに感謝の気持ちを述べました。
「でも、まだ始まったばかりです。大事なのは勝ち続けることです。勝者は勝ち続けなければならない。前に進むだけです… ここに来てくれた子供が、いつの日か、このステージに立ってスピーチをしているかもしれない。それがギャラクシーの流儀です」
サッカー少年の親としては、心に響きます。
世界中から選手が集まるギャラクシーで、絶対的キャプテンとしての地位を築き、堂々とした表情で人前で話す吉田は、日本人にとって見習うべきリーダーの姿だと感じました。ぜひギャラクシーの試合にも足を運んでみてください。
(12/11/2024)