子連れも野球初心者もOK! マイナーリーグ観戦が最高な理由

筆者・志村 朋哉

南カリフォルニアを拠点に活動する日米バイリンガルジャーナリスト。オレンジ・カウンティ・レジスターなど、米地方紙に10年間勤務し、政治・経済からスポーツまで幅広く取材。大谷翔平のメジャー移籍後は、米メディアで唯一の大谷番記者を務めた。現在はフリーとして、日本メディアへの寄稿やテレビ出演を行い、深い分析とわかりやすい解説でアメリカの実情を日本に伝える。

通信028
子連れも野球初心者もOK!
マイナーリーグ観戦が最高な理由

ロサンゼルスで「野球」といえば、多くの日本人がまず思い浮かべるのはドジャースでしょう。大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希を生で応援できるのは、南カリフォルニア在住の私たちの特権です。

しかし、南カリフォルニアの野球はそれだけではありません。ドジャースタジアムから車で1時間ほどの距離に、もっと身近で温かく楽しい野球を観戦できる穴場があります。それが、マイナーリーグ(MiLB)です。

マイナーリーグは、メジャーを目指す若手選手たちが技術を磨く「野球の登竜門」。各チームはメジャー球団と提携し、選手やコーチに実戦の場を提供しています。

そしてもう一つの重要な役目が「エンターテインメント」の提供です。派手なテーマイベント、マスコットのパフォーマンス、地元団体とのコラボなど、球団スタッフは観客を楽しませようと日々奮闘しています。

「野球はあまり詳しくない」という方でも、マイナーの球場では退屈しません。Tシャツの観客席への投げ込み、着ぐるみキャラとのかけっこレース、子供たちによるベースランニング、抽選会など、観客参加型のイベントがメジャー以上に盛りだくさん。野球に集中したい人も、イベントを楽しみたい人も、それぞれのスタイルで満喫できるのがマイナーリーグの真骨頂です。

ロサンゼルス周辺には、カリフォルニアリーグという「5軍」レベルに所属する3つのチームがあります。

Rancho Cucamonga Quakes(ランチョクカモンガ/ドジャース傘下)
サンガブリエル山脈を望む、モダンな球場。ドジャースの有望株を間近で見られます。かつてマイク・トラウト、ウォーカー・ビューラー、コーディー・ベリンジャーらもここでプレーしました。

Inland Empire 66ers(サンバーナーディーノ/エンゼルス傘下)
山並みを背景にした開放感あふれる球場は、ルート66の雰囲気が漂います。アメリカ的なノスタルジーと気軽な野球観戦を楽しみたい方におすすめです。

Lake Elsinore Storm(レイクエルシノア/パドレス傘下)
湖畔の球場は、小さな町ならではの素朴な雰囲気と熱気あるファンの声援が魅力。マスコットの”サンダー”は子どもたちに人気です。テメキュラのワイナリー巡りと組み合わせるのも良いでしょう。

私自身、かつてビクタービルの地方紙でハイデザート・マーベリックスという今はなきカリフォルニアリーグのチームの番記者をしていました。記者席には大抵、私一人だけ。球場スタッフや常連ファンとは自然と顔なじみになり、選手やコーチとも気さくに話せる距離感でした。

選手たちにとって毎試合が人生の分岐点。「今日の結果で昇格できるかも」「明日には解雇されるかも」。そんなギリギリの世界での人間ドラマには心を打たれました。そんな緊張感の中でも、スタンドには笑い声が響き、子どもたちが走り回っている。ゆるさと本気が同居するのが、マイナーの面白さなんです。

メジャーの試合はもちろん見応え十分ですが、チケット代は高く、駐車場は混雑し、選手との距離は遠いです。対してマイナーは、チケットが20ドル前後、駐車場も空いており、グラウンドもすぐ目の前です。子連れファミリーにとっては、子どもが騒いでも周りを気にせず、予算を抑えつつ野球観戦を楽しめます。

そして何より、「この選手が数年後、大谷翔平と共演するかも」と想像しながら観る試合には、未来を先取りする特別な興奮があります。

今シーズン、ぜひ一度マイナーリーグの球場を訪れてみてください。将来のスターたちと、お祭り気分に包まれた熱気、地元の温かさが、あなたを待っています。

(5/8/2025)

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