

筆者・志村 朋哉
南カリフォルニアを拠点に活動する日米バイリンガルジャーナリスト。オレンジ・カウンティ・レジスターなど、米地方紙に10年間勤務し、政治・経済からスポーツまで幅広く取材。大谷翔平のメジャー移籍後は、米メディアで唯一の大谷番記者を務めた。現在はフリーとして、日本メディアへの寄稿やテレビ出演を行い、深い分析とわかりやすい解説でアメリカの実情を日本に伝える。
通信034
暗いニュースに振り回されない
6つの習慣
最近、ニュースを見ていると気が滅入るような話ばかりです。
ロサンゼルスでは、不法移民の摘発が強化され、それに抗議するデモが続いています。ミネソタ州では、州議会議員とその配偶者が銃撃されるという事件もありました。中東では、イスラエルとイランの武力衝突が激化しています。「世界は一体どうなってしまうんだろう」と不安に感じてしまうかもしれません。
ですが、記者として、長年にわたり犯罪、事故、災害などを取材してきた立場から、お伝えしたいことがあります。それは、「ニュースで伝えられること」と「私たちの日常」は、必ずしも一致しないということです。
たとえば、「デモで一部が暴徒化した」という報道が流れると、「もう街には出られないな」と感じるかもしれません。でも実際には、多くの人がいつも通り仕事に行き、学校に通い、スーパーで買い物をし、家族と夕飯を囲んでいました。ニュースに出てくる“非日常”の裏には、変わらない日常がちゃんとあるのです。
そもそも、ニュースというのは「普通ではないこと」を取り上げるものです。報じられる出来事の多くは、日常の中ではごくまれにしか起きない“例外”です。だからこそニュースになるのです。ところが、そうした例外ばかりを目にしていると、それがまるで全てであるかのように錯覚してしまいます。
もちろん、移民政策、政治的分断、戦争などは、目をそらしてはいけない現実です。しかし、それらに冷静に向き合うためにも、まずは情報との接し方を見直すことが大切です。
以下に、私自身が実践している「不安に振り回されないための、ニュースとの付き合い方」をご紹介します。
1.一歩引いて、長い目で見る
たとえば、銃撃事件が起きたと聞くと、「やっぱりアメリカは危ない」と感じるかもしれません。でも実際には、犯罪率は1990年代に比べて大幅に下がっています。目の前の出来事が全体の傾向を表しているとは限らないのです。
2.ニュースの“摂取量”を決める
スマホを開けば、いつでもニュースが目に入る時代。でも、朝起きてすぐや、寝る前に暗い話題に触れるのは、心にとってよくありません。ニュースやSNSをチェックする時間を1日2回くらいに決めておくとよいでしょう。
3.ポジティブな情報にも目を向ける
暗いニュースばかりに触れていると、心が疲れてしまいます。前向きな話題や、地域でがんばっている人たちの取り組みなどを伝えるニュースも意識して探すようにしましょう。
4.「感情の強さ=問題の大きさ」ではない
動物虐待や子どもへの暴力、戦争の映像――こうしたニュースは心を揺さぶります。ただし、「すごく怖い=よく起きていること」ではありません。たとえば飛行機事故の報道は強く印象に残りますが、実際には飛行機の方が車よりずっと安全です。感情と現実を分けて考えるクセをつけましょう。
5.誰かと話してみる
不安を感じたとき、それを心にためていると、ますます不安が膨らんでしまいます。でも、家族や友人に「怖かった」と言葉にして伝えるだけで、気持ちが落ち着くことがあります。
6.目の前の「現実」に触れる
スマホやテレビを少し離れて、散歩したり、カフェで一息ついたり、ボランティアをしたりしてみてください。そうした日常の風景には、ニュースでは報じられない安心や希望があります。
私たちの暮らしの大半は、穏やかな「普通の毎日」です。もちろん世の中には色々な課題があります。でも、それを正しく見つめ、必要以上に不安を抱えないためには、自分自身の感覚や足元にある生活を大切にすることが大切です。
不安に心が傾きそうになったときは、ニュースの見方を少し変えてみてください。世界が少し違って見えてくるかもしれません。
(6/20/2025)






