VOL.20
イギリス好きのアメリカ人が作ったという
設定のプライベート・カフェ&ガレージ
テーマ設定は“イギリス好きのアメリカ人が作ったプライベート・カフェ&ガレージ”。その完成度の高さはもちろんだが、ディテールを飾る数々の装飾品もほとんどがDIYという、まさに“作るところから楽しむ”という遊びの達人が生み出したスペースをご紹介しよう。
ガレージのオーナー:
Masaru Nagano
プライベート・カフェ&ガレージを完成させたナガノさん。1年半かけて完成されたそのスペースは、とてもDIYの集大成とは思えない出来上がり。通行人が間違って、何かのお店だと思って入ってくることもあると言うが、この出来栄えなら勘違いしたとしても仕方ないだろう。
Aria_ Kyoto / Type_ Café and Garage
IMG_@garage_dd
まるでカフェの様な
不思議なおしゃれ空間
山裾の古びた住宅街の一角に、突如なんの前触れもなく、『ガレージDD(ダブルディー)』は現れる。京都府と滋賀県の県境に、その不思議な空間はあった。交通量の多い国道から、細い路地へと入り、自動車がすれ違うのもやっと、というような幅員の狭い道路に面した木造の倉庫だ。
誤解のないように予め記述しておくが、ここは商業用の店舗ではない。オシャレなレストランでもなければ、イギリスのバイカーズ・カフェでもないし、ましてやバイク屋でも自転車屋でもない。あくまでも、プライベートなカフェ&ガレージなのだ。
築37年というから、その古びた外観から受ける印象よりもずいぶんと建物は新しい。「元々は酒屋の倉庫だったんですが、使わなくなったんで、なにか有効活用できないかと思い、プライベートなカフェ&ガレージにしてみたんです」と語るのは、この不思議な空間を生み出したオーナーのナガノさんだ。
旧いオートバイのレストアを趣味にしていた ナガノさんだが、2015年式のハーレー・ダビッドソン・スポーツスターをたまたま友人から譲ってもらったのがキッカケになった。最初は 実家の生業であった酒屋で使用していた倉庫にスポーツスターを保管していたが、その光景があまりにもみすぼらしく、バイクに相応しい場所への改装を決意。この時、普通ならリフォームの専門業者へ相談するところ、ナガノさんは元来自作で何でも作ってしまう性分だっただけに、倉庫の改装も「全部自分でやっちゃおう」と考えた。しかも、装飾品を含めて一切お金をかけずに、全部自作して〝作る過程そのものを楽しもう〟と思ったそうだ。
内装はすべてDIYによる手作り
廃品を利用した雑貨類も必見!
DIYの製作期間は約1年半。酒屋の倉庫はご覧のような見事なスペースへと生まれ変わった。テーマは“イギリス好きのアメリカ人が作ったカフェ&ガレージ”。建物の奥には見せたくないものを収納する倉庫スペースを設け、パブのカウンターと背面に造作された壁面でスペースを区分け。カウンターから手前にゆったりとくつろげるソファ、大人4人が座れるカフェ・テーブル、さらに入口側にはガレージ・スペースを設けて、3つのスペースを区分けした。
ユニークなのは、やはりそのディテールだろう。立派なパブ風カウンターはなんとカラーボックス。電話ボックスはキリンレモンの冷蔵庫、シャンデリアはオートバイのブレーキ・ローターと仏壇用の蝋燭台の組み合わせ。よく見るとハンガーラックもオートバイのハンドルだし、ドアの取っ手もショックアブソーバーだ。「普通なら買って済ませるものを、廃品で作れないかな? って思ってしまうんですよね」と微笑む ナガノさん。カウンターを筆頭に、目に入ってくるものの大半は、説明されないと見逃してしまうほど高い完成度を誇るDIY作品ばかりだ。
ご実家が酒屋だけに「酒は売るほどあるので、最近はいつもこのガレージが友人たちのパーティ会場になっちゃって……」と語るご本人はお酒を飲まないそうで、「友人たちの送迎まで やってますよ」と笑う。
自分が楽しむだけでなく、友人たちも楽しませるカフェ&ガレージは、遊びの達人が生み出した、まさに“みんなの秘密基地”でもあった。
PHOTO & TEXT_Kazutoshi Akimoto 秋元一利
株式会社CLASSIXが発行する“カリフォルニア生活”を提案するマガジン。
カリフォルニア好きのバイブルとなっている!
Website: www.calog.net
Instagram: cal_magazine