母屋のログハウスと意匠を合わせた森の中に佇む木造ガレージ|Calマガジン-GARAGE Examples- VOL.14

VOL.14

キットガレージに独自のカスタマイズを追加
母屋のログハウスと意匠を合わせた
森の中に佇む木造ガレージ

自由奔放で破天荒な父に育てられ、贅沢にも余裕で2台並列して止められる20坪のスペースにクラシック・レンジローバー1台と、自らカスタマイズした無限軌道の自走式薪割り機を止める元井さんのガレージ。ベースは「グリーンベル・ゲーブルガレージ」だ。

大涌谷から降りてくる硫黄の匂いが、自然と温泉気分を盛り上げてくれる箱根の森の中。緑鮮やかな木々の間に、突如現れるのが元井さんのガレージだ。

よく見れば、すぐそばには色合いや形状を合わせたログハウスの母屋も建築されている。いや、正確には母屋に合わせたのはガレージの方だ。「グリーンベル」の販売するキットガレージをアレンジ。好みの仕様に変更してもらった、お気に入りのガレージである。。

ガレージのオーナー:
Junichi Motoi

「2017年に横浜から箱根へ移住。母屋を建築するのと同時にグリーンベルさんへオーダーしたのがこのガレージです。駆体の構造部以外、電気工事や配線 、上下水道に外壁塗装まで自分でやることで建築費を抑えました。結構こだわったのはトイレ。残材の外壁材を使ったり、屋根材を挟んで消音させたり、苦労して出来上がった部分です」

隣接する母屋はHONKAのログハウス。屋根の勾配や窓の位置など、母屋とガレージのイメージを統一させている。

キットガレージというと、厳格に規格化されたキットをそのまま設計図通りに施工するもの……と想像してしまうかもしれないが、日本国内でキットを製造・販売している「グリーンベル」の場合、オプションでカスタマイズを加 えることが可能だ。元井さんの木造ガレージも、同社の定番モデル「ゲーブルガレージ」をベースに独自の仕様へと変更を加えたオプション仕様である。

クルマ好きならではの実用的なカスタマイズを実現
世界でひとつだけの木造ガレージ

森外壁は母屋のログハウスと同じ色で3回に重ねて塗り上げた。雨の多い季節に作業したため、晴れ間を探してペイント作業をしたそうだ。

 1991年登録というごく初期のクラシック・レンジローバーが格納されるのは、母屋のログハウスと意匠を合わせた黒を基調とする木造のガレージ。よく見ると屋根の勾配や窓の位置・デザインまで母屋と一緒。細かな部分では軒天の出幅を45cmから90cmへと拡大することで、屋根まわりの印象も合わせている。外観は森の中で浮き立つことなく、しかも隣り合うログハウスとペアになるように仕上げているのだ。

床は整備工場や自動車ディーラーなどでも使用される塗り床。表面にクラックが入らず、掃除も楽。日焼けしても目立たないライトベージュを選択している。
リビングスペースの小屋組はキットガレージのオリジナルであるトラス構造。ランプはイケアのペンダントランプを一度分解して赤いコードに換装してシェードをリペイントしたもの。窓際のカウンターもDIY作品だ。

 内部も独自の仕様にカスタマイズ。「ゲーブルガレージ」は本来2×4構造を基本としており、小屋組もトラス造となるのだが、元井さんは内部を2セクションに分け、建物の奥側に設けたリビングスペースのみをオリジナルの構造としている。手前の愛車を止めるスペースは軸組工法のように3本の梁で強度を保つように設計変更しているのだ。さらにガレージドアもオーバースライドタイプではなく、一般的な巻き上げ式の電動シャッターをチョイス。こうした設計変更により、ガレージの天井高を駆体ギリギリの高さまで確保している。これは将来2柱のリフトを設置した際にも対応できるようにと、考えられたものだ。

 床は工場でも使用される塗り床。内壁は構造体そのものが美しく見られるように断熱材を入れず表し仕上げとした。電気配線は露出配管として、水道工事と合わせて自ら手がけたものである。基礎工事と建て方まではプロの職人に任せ、残りはコツコツと自分で仕上げたというガレージは、まさに“自分仕様”。同じものはどこにもない、世界でたったひとつのガレージとなった。

ガレージの奥に設けられたリビングスペース。小屋組の構造を変更したことから、強度的に必要になった。あえて2セクションに分け、耐力壁でクルマと人がいる空間の区分けが必然的に生まれた。
ガレージスペースは梁を3本渡してトラス構造の小屋組を廃している。オーバースライドのシャッターも、構造上クルマのすぐ上に開いたシャッターが被さって天井高が低くなることから採用しなかった。
余った屋根材を壁の中に幾重にも敷きつめて遮音させ、外壁の残材を使って部分的に変化をつけたトイレ。便器も含めて、すべて元井さんが設置・施工したものだ。

PHOTO & TEXT_Kazutoshi Akimoto  秋元一利

株式会社CLASSIXが発行する“カリフォルニア生活”を提案するマガジン。
カリフォルニア好きのバイブルとなっている!

Website: www.calog.net
Instagram: cal_magazine

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。