VOL.12
まるでアメリカの片田舎にあるような佇まい
3年の歳月を費やし、セルフビルドで仕上げた
アーリーアメリカンスタイルの木造ガレージ
クルマやバイクのメンテナンスから、家や納屋の改装まで、すべて自分の手で賄ってしまうという吉岡さん。航空機のエンジニアらしく、金属から木材までどんな素材でも自由に加工してしまう無類のDIYマニアが次に挑んだのは、なんと木造ガレージの新築工事だった! 基礎コンクリートから躯体の建築まで、都合1年がかりで挑んだという手作りの素晴らしいガレージの全容を、本邦初公開しよう!
ガレージのオーナー:
Koji Yoshioka
「実家の納屋を受け継いで製作したガレージの隣に、基礎から躯体まですべてDIYで仕上げた という木造ガレージを新築しました! 今後は、これまでガレージとして使用してきた旧ガレージ(納屋)のほうを仲間たちが集まるカフェに改装予定。車両の保管やメンテナンスは、新築したガレージで楽しみます!」
愛知県一宮市の郊外、芝生の美しい一戸建ての庭に、古びた納屋が佇んでいる。築100年超というその納屋は、現オーナーの祖父の時代に農器具を収納していたものだ。錆びたトタンと瓦屋根の外観がどこか懐かしい雰囲気を漂わせている、かつての日本ではよく見られた建物である。もっとも、木製のドアを開けて納屋の中を覗くと、ちょっとびっくりするかもしれない。そこには驚くほど美しく改装されたガレージが広がっているからだ。
オリジナルの梁や柱を上手に残したままリメイクされた室内には、大きな木製カウンターも備えられており、まるでカフェのようにも見える。この納屋は、オーナーの吉岡さんが自身の手で改装したもので、つい最近まで愛車シボレー・C10やハーレーダビッドソンのガレージとして活用されていた場所。じつはここで紹介するのは、その古びた納屋の“隣”に建築された木造の新しいガレージである。
元々、吉岡邸の敷地には古びた納屋が2棟建っていたそうだ。冒頭に紹介したのはそのうちの1棟で、今回新築した木造のガレージは、古い納屋の1つを解体した跡に新たに建築されたもの。驚くのはその木造ガレージの出来栄えだけではなく、なんとこれまた新築工事のほぼすべてを吉岡さん自身がセルフビルドで建築してしまったという事である。3年前に納屋の1つを自力で解体。その後、地盤の造成や基礎コンクリートの打設に約1年を費やした。さらに本体の建築にも1年がかり。こうして3年の月日を経て、2020年8月に完成したのがここで紹介する木造ガレージである。
古びた納屋と木造ガレージ2つの居場所を使い分ける理想的なガレージライフ
平日は航空機のエンジニアとして働くため、作業は週末限定。3年間の休日をすべて注ぎ込んで建築したというガレージは、とてもDIY作品とは思えない見事なものだ。梁や柱はホームセンターで購入した2×4材や無垢のヒノキ材などを使用しているが、駆体の強度を増すために木材の接合部はすべてオス・メスを加工して「ほぞ組み」にして仕上げている。なんと合計32ヶ所にも及んだという綱手は、まさに吉岡さんの凝り性な性格を示すディテールのひとつといえるだろう。
吉岡さんのガレージは、外観にも見所があふれている。杉板を鎧張して、アメリカの片田舎にありそうな木造の小屋に見立てているガレージには、“バーンドア”と呼ばれる吊り下げ式のドアが備えられている。しかも、通常1ピースなものをあえて2分割した上で折戸として取り付けている。これはクルマの出し入れの際には引戸として使い、人やバイクの出入りには片側の1枚だけ、折戸を開閉すればいいようにと、試行錯誤した結果だ。
その内部には中二階も設けられているが、ここにも工夫の跡が垣間見てとれる。2台の愛車を格納するために、中二階部は梁から下ろした柱で吊り下げられるように小屋裏に設置されている。愛車の駐車スペースを犠牲にすることなく、ストックの部品などを保管できるスペースとして、この中二階の設計もよく考えられている部分だ。
吉岡さんによると、今後は冒頭で紹介した旧ガレージ(納屋)を再度改装し、友人たちが遊びにきた時に寛げるスペースとしてアップデートの予定だとか。作業は新築のガレージで、寛ぎタイムは隣の納屋でと、2つの空間を上手に利用しながら、吉岡さんのガレージライフはますます充実していきそうだ。
PHOTO & TEXT_Kazutoshi Akimoto 秋元一利
株式会社CLASSIXが発行する“カリフォルニア生活”を提案するマガジン。
カリフォルニア好きのバイブルとなっている!
Website: www.calog.net
Instagram: cal_magazine