
第二一回
5月5日は端午の節供
家の繁栄を願う 柏餅
5月5日は五節供の一つ、「端午の節供」です。
「せっく」は、今は「節句」とも、「節供」とも書くことができますが、元は「節供」。「節日の供御」が語源といわれています。「節日」とは、季節の変わり目に不浄を清め、神事を行う日のこと。そして「供御」は、神様への食物のお供えのこと。今は行事そのものを指して節供と言っていますが、元は「行事の日の神様へのお供え」のことを指した言葉でした。
お供えした食物は、神事の後の直会(宴席)で、皆で共に食します。ご信仰によっては驚かれることかもしれませんが、神様も一緒に直会をします。直会では、神様をもてなし、共に食事をいただく喜びを分かち合い、そうして神様のご加護を祈ります。このことを「神人共食」と言います。
お正月のお節も毎年各家庭に来訪される歳神様へのお供えです。新年を言祝ぎ、神様に挨拶をした後にお節で直会をします。直会ですから、お節も神人共食。お節を食べる時に使う「祝い箸」の両端どちらも使えるように細くなっているのは、一方を人が使い、もう一方を神様がお使いになる為です。
神棚から下ろすお供えの野菜も冷蔵庫から出してくる野菜も、どちらも同じく自分が買ってきたものなのに、なぜか神棚から下ろしてきた野菜の方が有り難いもののように感じます。神様を経由すると「いつものもの」が「有り難いもの」に変わります。有り難い気持ちは幸せな気持ちと直結します。「心の持ちようでいつでも幸せになることができますよ」と節供が教えて下さいます。
この「瞬時に幸せになることができる智慧」を未来の子どもたちにも届けるため、「お供えする」という機会を大切にせねばと思います。故に、私は「節句」ではなく「節供」と書くようにしています。
端午の節供の代表的な行事食は「柏餅」。柏の葉は新芽が出ない限り葉が落ちないことから、「家が栄える」という意味があります。今年の柏餅は神様にお供えをしてから召し上がってはいかがでしょうか。

(5/5/2025)

筆者・森 日和
禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com




