注目の中間選挙。民主党にとっての“希望の星”は、ドナルド・トランプ

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アメリカ101 第143回

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 アメリカの今年最大の政治イベントである中間選挙が本格化していますが、政権与党・民主党にとって、宿敵である「ドナルド・トランプが、その勝利へ向けた最大の武器」という逆説的な現象が起こっています。 

 中間選挙は、4年に一度の大統領選挙の真ん中の年に実施されます。目玉は2年毎に改選となる連邦下院議員(定員435議席)全員と連邦上院議員(定員100議席)の3分の1の選挙。時の大統領が率いる政権政党が議席を減らすのが通例で、与党が議席を増やしたのは最近では、2001年の同時多発テロ事件で挙国ムードが高まったあとの2002年の中間選挙でした。 

 今回の中間選挙は、就任2年のジョー・バイデン大統領にとっては最初の全米規模での審判となるわけですが、上下両院での過半数議席維持は困難で、大敗の見方が強くなっています。 

 それを予測するような「民主党大幅後退」の様相を示したのが、最近の一連の世論調査です。ネット調査サイトの「リアル・クリア・ポリティクス」ではバイデン支持率は38%弱、ニューヨーク・タイムズ紙では33%という、就任以来の相変わらずの低空飛行です。これを、共和党寄りのウォール・ストリート・ジャーナル紙は「歴代大統領では(世界で最も深い海溝の)マリアナ海溝に匹敵する」低い支持で、「rout」(大敗)の前兆と指摘しています。 

 アメリカの世論調査で特徴的なのは、「国家としてのアメリカが正しい(right)方向にあるか?」という設問ですが、ニューヨーク・タイムズ紙の調査では、「正しい方向」との回答はわずか13%で、2007年秋のリーマン・ショックに続く世界的な金融危機以来の低い数字。「誤った方向」とするのは、年齢層、人種、都市・郊外・農村、党派を問わず8割にも達するという厳しい判断です。 

 バイデンにとって大きなマイナス要因は、現在79歳であり、2024年の次期大統領選挙の投票日当日にほぼ82歳になるという、「後期高齢者」の大統領であることへの疑問符です。アメリカの歴史で最高の高齢者で、身内である民主党支持者の間でさえ、再出馬支持はわずか26%で、30歳以下の支持者となると、94%が別の候補が好ましいと答えています。 

 インフレが高進、物価上昇率は86%という記録的な高率で、ガソリン代は全米平均でガロン当たり450ドルといった消費者にとってのダメージが厳しく、リセッション(景気後退)入りも時間の問題といった経済環境では、民主党にとって中間選挙の結果が思いやられる状況です。 

 そして、そんな苦境にあるバイデン政権、そして民主党にとっての希望の星は、皮肉なことに宿敵であるはずのトランプです。 

 人気低迷のバイデンですが、救いは、その人柄に対する好感度が依然高いことです。2024年大統領選が前回と同じバイデン対トランプの想定では、バイデン支持が44%、トランプ支持が41%であるものの、バイデンの好感度はその支持率を6ポイント上回っています。トランプの好感度は不明ですが、そのアクの強さからすれば、低めであることは間違いありません。中間選挙以前に次期大統領選出馬を表明した有力候補は前例がありませんが、目立ちがりやのトランプが、このところ共和党の有力政治家として頭角を現しているフロリダ州のロン・デサンティス知事の再選選挙運動を煙たがって、早々に正式に大統領選再出馬を表明すれば、中間選挙での共和党の選挙態勢に冷水を浴びせる結果になると民主党側は期待しているようです。 

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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(7/12/2022)

 

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