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アメリカ101 第235回
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年恒例のサマー・ホリデーシーズンを迎えて家族旅行に出掛ける向きが最高潮に達するこの時期は、同時にアメリカや日本を問わず、それぞれのファストフード業界にとって「かきいれどき」であり、今年も各チェーン店ではさまざまなプロモーション戦略で、顧客獲得に乗り出していますが、今回のコラムは、アメリカでの大手各社が展開している最新の「お値打ち競争」などの、ファストフードにまつわる話題です。
まずは、そんな本題に入る前に、「かきいれどき」という、この何気なく日常的に口にしている日本語の常套句について、一歩立ち止まって、その語源を探ってみましょう。
年間を通じて最も商売が繁盛する歳末商戦の時期や、夏場の中元商戦といった商機に、「大勢の顧客を掻き込む」といった忙しい店舗の雰囲気のイメージを彷彿(ほうふつ)させる表現ですが、実は「かきいれ」は漢字では「書き入れ時」と記すのが正解。
江戸時代から明治時代にかけては、商いは現金取引ではなく、掛け取引が本流で、それぞれの成立した商いの売掛金を「大福帳」と称する帳簿に記していました。それを「書き入れ」と呼んでいたようです。身近なところでは、落語などで「年が越せない」というシチュエーションが設定された筋書の作品がありますが、年末までには、掛け取引の清算を終えなければいけないものの、その返済に苦労する状況を「年が越せない」という表現で記していたわけです。
以上で閑話休題とし、本題に入りますが、ファストフード業界の今年の“商戦”は、文字通り「“お買い得”食事戦争」(budget meal war)だそうです。戦端の幕を切ったのはマクドナルドで、今月25日から一か月にわたり、コンボ・ミール(combo meal)として、マックダブルあるいはチキン・ナゲット4片に、スモールサイズのフレンチフライとスモールのドリンクを5ドルで提供すると発表。これを受けて、まずウェンディーズが期間限定付きながら、コンボ朝食メニューをわずか3ドルで提供すると“反撃”したのに続いて、バーガーキングが好評だった「5ドルユアー・ウェー・ミール」($5 Your Way Meal)をメニューに復活することを明らかにしました。
そして商戦はエスカレートし、携帯アプリ利用の注文には値引き幅を広げる動きが広がり、マクドナルドのサンタアナ店では、「ビッグマック、ミディアム・フライ、ミディアム・ドリンク」のメニューが店頭注文では税込み前価格が11・79ドルなのに対して、同一店舗でのピックアップながら携帯アプリで注文すると、税込み前価格が6・50ドルと、実に5・29ドルも安くなる計算です。
筆者にとって、マクドナルドでの“食事”は「アメリカ生活」の入門講座の感じでした。アメリカ駐在の特派員として、内戦で戦火の真っ只中にあった中東レバノンの首都ベールートから、1977年に海外駐在の“横滑り”でアメリカの首都ワシントンに転勤したのですが、最初のアメリカ式ファストフードを経験したのは、重要な取材先である連邦議会を訪れた際です。先任記者の案内で議事堂内を一巡りしたのですが、昼食は議事堂地下にある食堂でした。そこでは、手作りのハンバーガーを注文するのですが、パンの間に挟む食材の選択を問われて、返答に詰まったのを忘れません。それからは、注文式のバーガーショップは避けて、もっぱらマクドナルドを利用するというわけで、アメリカ生活が半世紀にも及ぶものの、「アメリカ人」になりきれない「純ジャパ」に徹している始末です。
まずは、そんな本題に入る前に、「かきいれどき」という、この何気なく日常的に口にしている日本語の常套句について、一歩立ち止まって、その語源を探ってみましょう。
年間を通じて最も商売が繁盛する歳末商戦の時期や、夏場の中元商戦といった商機に、「大勢の顧客を掻き込む」といった忙しい店舗の雰囲気のイメージを彷彿(ほうふつ)させる表現ですが、実は「かきいれ」は漢字では「書き入れ時」と記すのが正解。
江戸時代から明治時代にかけては、商いは現金取引ではなく、掛け取引が本流で、それぞれの成立した商いの売掛金を「大福帳」と称する帳簿に記していました。それを「書き入れ」と呼んでいたようです。身近なところでは、落語などで「年が越せない」というシチュエーションが設定された筋書の作品がありますが、年末までには、掛け取引の清算を終えなければいけないものの、その返済に苦労する状況を「年が越せない」という表現で記していたわけです。
以上で閑話休題とし、本題に入りますが、ファストフード業界の今年の“商戦”は、文字通り「“お買い得”食事戦争」(budget meal war)だそうです。戦端の幕を切ったのはマクドナルドで、今月25日から一か月にわたり、コンボ・ミール(combo meal)として、マックダブルあるいはチキン・ナゲット4片に、スモールサイズのフレンチフライとスモールのドリンクを5ドルで提供すると発表。これを受けて、まずウェンディーズが期間限定付きながら、コンボ朝食メニューをわずか3ドルで提供すると“反撃”したのに続いて、バーガーキングが好評だった「5ドルユアー・ウェー・ミール」($5 Your Way Meal)をメニューに復活することを明らかにしました。
そして商戦はエスカレートし、携帯アプリ利用の注文には値引き幅を広げる動きが広がり、マクドナルドのサンタアナ店では、「ビッグマック、ミディアム・フライ、ミディアム・ドリンク」のメニューが店頭注文では税込み前価格が11・79ドルなのに対して、同一店舗でのピックアップながら携帯アプリで注文すると、税込み前価格が6・50ドルと、実に5・29ドルも安くなる計算です。
筆者にとって、マクドナルドでの“食事”は「アメリカ生活」の入門講座の感じでした。アメリカ駐在の特派員として、内戦で戦火の真っ只中にあった中東レバノンの首都ベールートから、1977年に海外駐在の“横滑り”でアメリカの首都ワシントンに転勤したのですが、最初のアメリカ式ファストフードを経験したのは、重要な取材先である連邦議会を訪れた際です。先任記者の案内で議事堂内を一巡りしたのですが、昼食は議事堂地下にある食堂でした。そこでは、手作りのハンバーガーを注文するのですが、パンの間に挟む食材の選択を問われて、返答に詰まったのを忘れません。それからは、注文式のバーガーショップは避けて、もっぱらマクドナルドを利用するというわけで、アメリカ生活が半世紀にも及ぶものの、「アメリカ人」になりきれない「純ジャパ」に徹している始末です。
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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)
通称:セイブン
1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。
(6/12/2024)