20年ぶりの高水準 アメリカでの飲酒運転による交通事故死

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アメリカ101 第231回

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 近年減少傾向が続いていたアメリカでの飲酒運転による交通事故死が、このところ20年ぶりの高水準に達しており、道路交通安全を確保するために設置されている連邦政府レベルでの担当部局であるNHTSA(National Highway Traffic Safety Administration=国家幹線道路交通安全局)や各州政府が対策強化に乗り出しています。

 NHTSAが今年4月に発表したデータによると、全米の2022年の全米の飲酒運転に伴う交通事故死亡者は約1万3500人で、前年比でほぼ同水準、2019年比では33%増だったとのこと。このような高水準の死者数は2006年以来で、昨年の公式データは未発表ながら、わずかに減少した程度とみられています。同時に、この間の飲酒運転摘発による逮捕者数は数十年ぶりの低い水準にとどまっており、取り締まりの強化が飲酒運転への“抑止力”効果があることから、今後各州政府当局は検問などに力を入れる方針とのことです。

 飲酒運転による事故死の増加は、新型コロナウイルス感染拡大が引き金になったようです。2020年からの感染拡大で、オフィスへの通勤に代わっての在宅勤務、リモートワークが増えました。その結果、通勤時間帯での交通渋滞がなくなったのを受けて、速度違反、シートベルト不使用、飲酒運転が顕著となったのに加え、取締り側の警察も、検問によるドライバーとの接触で感染の危険が高まるのを避けるために、交通違反のケースも“見逃す”という対応に切り替えたため、飲酒運転(DUI=driving under the influence)の摘発が減少するようになったとみられます。

 FBI(連邦捜査局)によると、DUIによる逮捕件数はコロナウイルス禍に入ってから、数十年ぶりに低い水準となっています。DUIは2019年時点では100万強だったものが、2020年には78万に減少しており、その後も同水準が続いているようです。

 当局者たちや交通安全活動家の間では、飲酒運転による死亡事故の防止策として、最も効果的なのは自動車自体に、ドライバーのアルコール飲酒水準が一定の限度をオーバーすれば、それを検知して自動的にエンジンがかからなくする装置を開発し、それを自動車に組み込むのがベストだとの見方が強いとのこと。それを受けて、NHTSAでは昨年12月に、すべての新車に、ドライバーのアルコール水準が一定のレベル以上の場合にはエンジンが作動しない装置を開発・据え付ける方向で、新技術規格の作成にあたる方針を明らかにしています。

 オハイオ州のマイク・デワイン州知事(共和党)はウォール・ストリート・ジャーナル紙とのインタビューで、「人命救助が絶対的な最優先課題だ」と人命最優先を掲げて、飲酒運転やドラッグ中毒ドライバーの運転を防止するため、あらゆる方策を探ると強調しています。同州では現在、他の州と同様に、深刻な人員不足に直面しており、そのハイウェーパトロール隊については、1500人以上の隊員定員体制を維持するための予算措置が、すでに講じられているものの、実際には1350人の充足状況にとどまっているのが現状です。

 

 現場で直接交通取り締まりにあたる係員たちは、ハイウェーを利用するドライバーが、通行の途中に実際に監視・検問やDUIの現場を目撃するのが、大きな教育効果をもたらすと強調しており、“派手に目立つ”のを意識して仕事に取り組んでいるようです。
 
 

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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(5/15/2024)

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