加州で続く住宅価格の高騰 LA、OCなど「unaffordable」な住宅価格

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アメリカ101 第232回

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 カリフォルニア州での住宅価格の高騰が続いており、4月には初めて戸当たりの中央値が90万ドルの大台を記録しました。80万ドルを突破したのはわずか2年前の2022年3月で、このような急速な値上がりは、住宅購入を考えている向きには容易に手に届かない水準です。昨年10月に8%近くまで上昇した住宅ローン金利水準が7%前後までに戻しているものの、マイホームを夢見る“手元不如意”の庶民にとっては、夢の実現は遠くばかりです。
 
 
 カリフォルニア不動産事業協会(California Association of Realtors)のデータによると、景気の先行きに対する警戒感や住宅ローン金利が7%前後に推移しているにもかかわらず、住宅価格の中央値は、2023年4月以来11.4%上昇して90万4210ドルとなっています。
 
 住宅市場が繁忙期を控えて、州内全体で供給件数が依然として限られている結果、価格がほぼ6%上昇しており、100万ドル以上の住宅が昨年4月以来ほぼ40%値上がりという活況を呈しているため、州全体の住宅の中央値を押し上げています。加えて、従来は「手が届く」(affordable)範囲内の価格となっていた州内の一部地域の住宅が値上がりしているのも背景にあるようです。
 
 住宅市場の見通しでは、一時はサンフランシスコ湾一帯からの住民流出や緩慢状況が推測されていたものが、実際には2023年4月以来の年間上昇率が15.5%という高率の値上がりを記録しました。そして州内全体を眺めても、オレゴン州と接する北部地域が5.2%の値下がりとなったという例外を除いては、軒並み上昇を記録しています。それは、州内のロサンゼルス、サンディエゴ、サンフランシスコといった大都市圏での値上がりが示すとおりです。
 
 特に注目されるのは、意外な都市での値上がりです。その典型的な例は、最大の値上がりを記録したオレンジ郡内アナハイムの南に位置するタスティンです。ベッドタウンなのですが、昨年比11.7%の値上がりを記録し、戸当たりの中央値価格では100万ドルを突破しています。そして11.5%上昇で2位となったのは野外ロック・フェスティバルの開催場所コ-チェラバレーに接するコーチェラ市です。
 
 記録的な値上がりでロサンゼルス、オレンジ、リバーサイド、ベンチュラといった南カリフォルニアの6郡(カウンティ)での中央値住宅価格は86万9082ドル(3月現在)で、前年比で9%上昇です。これは2022年6月に記録した最高値を1%上回るもので、平均価格で住宅購入を検討している向きには、過去16年で最もunaffordable(負担しきれない)水準という“重荷”です。
 
 というのも、前述の不動産事業協会が試算したところ、カリフォルニア州で中央値の価格帯で住宅を購入するには、少なくとも年収規模が22万2800ドルが必要とのことで、これに該当するのは購入を考えている人のわずか15%ということもあって、大部分の人にとっては「高嶺の花」ということでしょうか。
 
 

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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(5/24/2024)

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