お正月をあえて〝不便〞にして、 感謝に溢れる一年の始まりに|べっぴん塾

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第五十五回

お正月をあえて〝不便〞にして、
感謝に溢れる一年の始まりに

 

明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

毎年お正月に家々を訪問なさると伝わる歳神様。歳神様は歳徳神ともいい、福をもたらしてくださる神様です。
神様をお迎えする準備として、まずは大掃除をします。目に見える埃だけではなく、目に見えない穢れも祓い、場を清めます。そして、外に出した穢れが再び家の中に入って来ないように、玄関に注連縄を張ります。

神様の依代として玄関や門の外に門松を据えます。現在は竹が目立っている門松ですが、主役はあくまでも松。松は神霊が宿る木であり、また、「神を待つ」という意味を持つほか、常緑樹であることから生命力や長寿の象徴でもあります。門松には切った枝ではなく、根っこが付いたものを用います。それは、平安時代の宮中行事「小松引き(正月最初の子の日に長寿を願って野に出て小松を引き抜き持ち帰るという遊び)」に由来している為と考えられています。門松を飾っている期間のことを「松の内」といい、今は一般的に1月7日までのことを指します。

そして、神様へのお供え物として鏡餅やお節料理(お節)を用意します。

お正月は神様にゆったりと過ごしていただく為に、皆も仕事を休み、穏やかに過ごします。「皆」とは、人だけでなく道具も含まれます。道具が仕事を休むと、たちまち暮らしは不便になります。包丁やまな板、ガスコンロも使えませんから食事を作ることもできません。そのような時に火を使わずに食べることができるお節が役立ちます。神様へのお供えを済ませた後、お下がり(撤饌)としてお節をいただきます。

時に道具がないと食べることができない物があります。どうしたら道具を使わずに食べることができるか、「不便」が「工夫する力」を鍛えます。また、「不便」になるからこそ、「いつも」が有り難いことに気づかされます。
お正月をあえて不便にして、感謝に溢れる一年の始まりとなさるのはいかがでしょうか。

(12/24/2025)


筆者・森 日和

禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com

 

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