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第四十五回
「心身相即」
心を整えて、美しい動作を心がけましょう
「スカートがふくらんでいるわよ。」
ある日の和室での稽古で畳に座ろうとした時に、先生がぽつりとおっしゃった言葉です。その日はとても柔らかいシフォン素材のスカートをはいていました。稽古中ですから、もちろん丁寧な動作を心がけてはいたはずですが、立ち姿から座り始めると、柔らかいスカートは空気を含んでふわりと膨らみました。スカートが膨らんでいるということは、風を起こしているということ。つまり、「あなたの動作で立った風が、隣りの方にあたってご迷惑よ」と暗におっしゃったのです。風を起こさない為には、できる限りゆっくりと静かに座らねばなりません。もちろんフラフラしてもいけません。そのようなことを意識して、稽古を続けていると、いつしか足腰が鍛わり、優美に座ることができるようになっています。
電車に乗っていると、時々、座席にドシンとおかけになる方がいらっしゃいます。一方、ゆっくりと静かにおかけになる方もいらっしゃいます。ゆっくりとおかけになる方と出逢うと、そのお心遣いに優しさを感じ、幸せな気持ちになります。知らない方であっても、話さずとも、動作で人を幸せな気持ちにして差し上げることができるのです。
丁寧な動作は、仕事においても大切です。お客様の物を扱う時はもちろん、書類を手渡す、バッグを置く、ドアの開閉など、いつもの何気ない所作を優しくおこなうと、場の雰囲気が穏やかになります。人は穏やかな雰囲気に安心感を覚えます。そして、動作をおこなったご本人の心も穏やかになります。
緊張していたり、イライラしていたりすると、動作のスピードが速くなることが多く、粗雑な印象を与えてしまいます。心と体は「心身相即」、互いに影響を及ぼし合う関係。心が動作に影響し、また動作が心に影響します。心が整っていないと感じる時ほど、あえて動作をゆっくりとすることを意識します。良い意識が良い動作となり、良い結果につながっていくことと思います。

(10/17/2025)

筆者・森 日和
禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com
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