
第二◯回
「もしもし」は「申す申す」の略語
電話のマナーについてお話ししましょう
皆様は電話での声の印象を意識されていらっしゃいますか。
電話の第一声は「挨拶」です。目の前に人がいらっしゃる時の挨拶は笑顔でなさっていると思いますが、電話ではいかがでしょうか。表情は相手には見えませんが、その雰囲気は伝わるものです。日本では、時々電話に向かって頭を下げていらっしゃる方をお見かけします。そのお姿はお相手からは見えていませんが、きっとそのお気持ちは伝わっていることと思います。相手から見えていなくとも電話は笑顔で。そして、声は明るくあたたかく。電話から聞こえる声は、思っている以上に冷たい印象に伝わるものです。電話ではいつも以上に明るくあたたかい声で話すように心がけます。逆に電話の相手の声が冷たく感じる時は、自分の声はどうだろうと振り返る機会とすると同時に、お相手はご自分の声が冷たく聞こえているとは思っていらっしゃらないと理解すると、落ち着いて応対することができます。
日本人の「もしもし」が印象的なのか、海外の方がそう言って日本人の真似をされる姿を見ることがあります。日本の電話のマナーでは、実は「もしもし」はNGです。「もしもし」は「申す申す」の略語。仕事のお相手やお客さま、目上の方に略語を使うのは失礼であるため、電話の第一声は、「はい、○○でございます」と応答します。「もしもし」ではなく第一声は「はい」。その快活な応答は、電話相手のお気持ちをも晴れやかにするのではないでしょうか。
知らない電話番号からかかってくると、「セールスの電話かしら?」と、無愛想に出てしまいがちですが、それも要注意。知り合いからの電話かもしれません。どのような場合も爽やかな第一声を心掛けたいものです。
電話の声も重要なおもてなし。印象が良ければ、皆さまのお店や会社、ひいてはご自身の応援者を増やすことにもつながります。おもてなしは、お会いする前の電話応対から始まっています。皆様の電話のお声の印象はいかがでしょうか。

(4/23/2025)

筆者・森 日和
禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com