日本の玄関での習慣|べっぴん塾

第三十七回

日本の玄関での習慣
靴を脱ぐ時の作法についてお話いたします

多くの日本の家屋は玄関で靴を脱ぎます。この度は靴を脱ぐ時の作法についてお話しいたします。

訪問先では、お迎え下さっている相手から遠い方の足から玄関を上がります。ほんの少しの差ですが、相手の前に出る足が、近いよりも遠い方が幾分相手にとって心地よく、場の空気が穏やかなものとなります。

そして、靴を揃える為、体の向きを靴の方に向き直しますが、その時は、相手にお尻を向けない方に回転(上座まわり)します。どちらまわりが「上座まわり」かがわからない時は、相手を見ながら回転すると、自ずとお尻を相手に向けることはありません。
これらの所作は仕事にも役立ちます。お客様や目上の人の近くで歩み出す時は遠い方の足から、方向転換をする時はお尻を向けないようにする。その心遣いはとても小さく目立たないものなので、相手は気づかないかもしれませんが、所作から醸されるあたたかい空気は感じて下さることと思います。

そして、靴は出ていく方向に向きを変え、玄関の端に揃えて置きます。

靴を揃える理由は、玄関を美しく保つ為です。皆様に気持ち良くお感じいただく為、玄関の靴は整えておきます。

靴を出ていく方向に向きを変えるのは、次の動作の準備を兼ねている為です。靴を脱いだ後、次に靴を使うのは、外に出て行く時です。サッと履いて、サッと出発することができるように、出ていく方向に靴を向けて揃えます。
こちらも仕事に役立ちます。仕事の終わりに始まりの準備を兼ねておけば、何か不備があった場合にも早く気づくことができます。また、仕事の効率も上がります。

「靴を脱いだら揃える」は、「~っぱなし」にしない習慣作りの為に、小さな頃から「当たり前のこと」として教わります。当たり前のことを非凡なまでに徹底して行うことを「凡事徹底」といいます。当たり前のことがきちっとできると信頼につながります。信頼は人の可能性を広げます。子どもたちに「当たり前」を具えて差し上げること、大切なことだと思います。

(8/21/2025)


筆者・森 日和

禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。