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第八十二回
七夕の素麺と割箸に宿る、
日本の祈りと森の循環
七夕の行事食、素麺。細く長い麺を「天の川」や織姫の「織り糸」に見立て、無病息災を願う習わしがあります。
そのルーツは、古代中国の唐菓子「索餅」にあるといわれています。小麦粉と米粉を練り、縄のようにねじって作るお菓子で、古代中国の故事により「七月七日に索餅を食べると一年間無病息災で過ごせる」という言い伝えが残されています。
この風習は奈良時代に日本へ伝わり、七夕に索餅を食して無病息災を願う宮中行事として定着しました。第六十代醍醐天皇の御代に編纂された「延喜式」(九二七年)にも、旧暦七月七日の七夕の儀式に索餅を供える旨が記されており、当時の宮中において欠かせない供え物であったことがうかがえます。
素麺が現在のような細い麺状になったのは鎌倉時代(十二世紀末から一三三三年)頃から。室町時代(一三三六年から一五七三年)には「索麺」「素麺」の文字が文献に登場するようになります。
子どもたちの夏の楽しみの一つに「流し素麺」があります。半分に割った青竹の樋に水と素麺を流し、流れてきた麺をすくい取って食べるというものですが、ここで欠かせないのが割箸です。つるつるとしている素麺は塗りの箸で掴むことはなかなか難しいものですが、割箸ならしっかりとキャッチすることができます。
割箸は環境に良くないと言われることがありますが、環境保護の為の物もあります。日本で作られる割箸の多くは、建築用木材の端材や間伐材から作られています。間伐は、密集した木々を適度に間引き、日差しを地面まで届けて、木が丈夫に成長できる環境を整える為に欠かせない作業で、それを怠ると根が弱り、豪雨の際に水を保つことができず、土砂崩れや倒木の原因にもなります。
本来なら廃材、つまりゴミになるところ、割箸として活用することで、森林を守るための費用を生み出すことができます。廃材活用の割箸は環境を損なうどころか、むしろ日本の森を健やかに保つ為の循環の一部を担っているのです。

(7/9/2026)

筆者・森 日和
禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com
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