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第八十三回
たった一度の食事のために
割箸職人が守る日本の美
先週に続き、もう少し「割箸」の話をいたしましょう。
箸を折れにくくする為、日本製の割箸の木目は縦に通っています。
端材や間伐材で木目を縦に揃えて割箸を作ることは容易ではありません。しかし、割箸がまっすぐ割れなかったり、箸が折れると縁起が悪いと考える人もいるので、木目を揃えて、美しく割れるように、箸が折れないようにしてくださっています。そのような配慮がなされていることに気づく人はほとんどいない上、割箸は使いきりですから、使う時間はほんの「一回の食事の間だけ」。それでも、「使えればいい」や「少しくらい木目が斜めになってもいい」というような妥協や、「端材や間伐材を使っているから」という言い訳はしない。まっすぐ通った美しい木目に日本人の仕事に対する心意気を見ることができます。
また、箸の格にも日本人が大切にしてきたものを知ることができます。日本の「格」は、値段の高い低いではなく、先人が伝えたかった重要度の順になっていると感じます。
一番格の高い箸は、お正月などの祝い膳で使う「柳箸(祝箸ともいう)」です。一見、高価な漆塗りの箸のほうが格は高いように思いますが、一度限り使用するという観点から実は柳箸や割箸のほうが格上とされています。穢れは災いの元と考えているので、一度も使っていない「穢れてない清らかな物」をお客様にお出しすることは、相手のお幸せを密かに祈る、最高のおもてなしなのです。
割箸が伝えていることは、他者ヘのおもてなしの心だけではなく、自分自身への「清浄観」というメッセージもあります。
清浄観には、「清らかな心で物事を観る」や、「利他を重んじる心」すなわち「他者の喜びを大切にしなさい」という教えが含まれています。
日本文化に清浄観の象徴である「白」と「使い捨て」が多く登場するのは、その心を忘れさせない為の工夫なのではないかと思うのです。
割箸の格が高いのは、「清浄観をずっと大切にし続けてほしい」という、ご先祖様たちの願いからなのではないかと思います。

(7/16/2026)

筆者・森 日和
禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com
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