ケネディ族の3代目の“ワクチン陰謀論”

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アメリカ101 第205回

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「売り家と唐様で書く三代目」という日本のことわざがあるように、大成功をおさめた人物の子孫三代目となると、その“生き様”が難しいというのは東西に共通するようです。

それはアメリカの政界でも例外ではなく、歴代大統領のトップスリーにランクインする常連であるジョン・F・ケネディ(JFK、第35代大統領)やロバート・F・ケネディ(司法長官)を輩出したケネディ族でも、その父親で一族の出世頭だったジョセフ・P・ケネディ(証券取引委員会=SEC=初代委員長、駐英大使)から数えて3代目にあたるロバート・F・ケネディ・ジュニア(RFK Jr)(69)が、その“立ち位置”を模索しており、今年4月に、来年の大統領選挙に出馬したのはいいのですが、一家あげて民主党支持という伝統から離脱して、10月9日に無所属への鞍替えを発表しました。

弁護士としては環境問題に取り組んでいるのですが、新型コロナウイルス感染拡大で、ワクチン接種が自閉症発症に関連しているとの“陰謀論”を主張、「こどもの健康を守る会」(Children’s Health Defense)を立ち上げ、自身が会長に就任しています。その一環で、アンソニー・ファウチ、ビル・ゲイツ、そしてジョー・バイデンといった、ワクチン接種の必要性で旗振り役をつとめている有名人を非難、「アンソニー・ファウチの真相」(Real Anthony Fauci)や「リベラル派への書簡」(A Letter to Liberals)といった著作を執筆しています。

大統領選では、現職のバイデン大統領相手の民主党の大統領候補指名争いで勝ち目がないことから、無所属となることで、波乱を巻き起こすのが狙いとみられています。

 

父親のロバート・ケネディは重要閣僚ポストにつき、兄であるJFKのサポート役として辣腕を振るった政治家で、エセル夫人との間に生まれた子沢山の11子の3番目として生まれたのがRFK Jrです。  首都ワシントンDCやマサチューセッツ州で育ち、ハーバード大学を経てバージニア大学(UVA)ロースクールで法務博士(Juris Doctor)の学位を取得したあと、ニューヨーク市地方検事補を経て環境問題を専門とする法曹家として活躍。  “ワクチン陰謀論”は、ワクチン接種と自閉症を関連付ける見方で、アメリカのメディアでは、有名人としては、RFK Jrだけでなく、モデルで俳優のジェニー・マッカーシー、俳優のロバート・デ・ニーロ、歌手で女優のトニー・ブラクストン、ジム・キャリー、コメディアンでテレビ司会者のビル・バーなどが、そのような見方に賛同しているとのこと。

大統領選挙では、近年は事実上民主党と共和党の指名候補が一騎打ちとなるパターンで、第三党や無所属として出馬する候補者があるものの、通常は“泡沫候補”として、選挙の最終結果には影響を及ぼすことはありません。今回も、民主党は現職のバイデンの再出馬・指名が確実で、ホワイトハウス奪回を狙うドナルド・トランプを先頭とした共和党側の候補指名争いは、10人を超える政治家が名乗りを上げる“乱戦”ですが、来年夏の全国党大会で一本化となるのは確実で、最終的には民主、共和両党候補の一騎打ちとなる見通しです。

そんな中で、「第3候補」が何らかの影響を及ぼすとすれば、それは本番の大統領選挙を左右する激戦州で、「第3候補」がキャスティング・ボートを握るケースが考えられます。最新の「ロイター通信・イプソス」による世論調査では、トランプが40%、バイデン38%という接戦が続いており、RFK Jrは14%であるものの、これらの票は最終結果を左右する可能性があります。

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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(10/10/2023)

 

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