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アメリカ101 第154回
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以前このコラム(第142回)で、カリフォルニア州政府の税務当局(Franchise Tax Board=FTB)からの“秋のボーナス“が支給される話題を取り上げましたが、9月13日に詳細が発表となり、該当する納税者には最低でも350ドル、最高で1050ドルがインフレ救済のため、「Middle Class Tax Refund」(MCTR=中産階級税金還元)として給付されることが本決まりとなりました。来月から来年1月までに、該当者の銀行口座振り込み、あるいは現金(デビットカード)郵送という方法で支給される予定です。還元される金額は納税額や被扶養者の有無などで決まりますが、大筋では、これまでの発表と同じであるものの、これを機会に、そのおさらいをしましょう。
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いったん納税した金額の一部が納税者に還元/払戻しとなるのは、カリフォルニア州政府の財政状況が大幅に改善、黒字幅が拡大しているからです。その背景は、株式市場を中心とするマーケットの好調な展開で、その取引に伴うキャピタルゲイン(資本利得)への課税額が増えたことが挙げられます。
今年7月1日から始まった2022-2023財政年度州政府予算での黒字幅は1014億ドルに達しました。今年1月時点での州議会予算分析室(LAO)の試算では、黒字幅は最大290億ドルでしたが、その後拡大した結果です。カリフォルニア州は人口3900万人という人口を抱えるアメリカ最大の州ですが、同時に生計費もトップという“住みにくい“州でもあります。例えばガソリン価格は、夏には場
所によっては一時ガロンあたり9・60ドルという馬鹿げたレベルに達したほか、住宅費は全米平均の2倍という有様。一戸建て住宅の平均価格は68万ドルをオーバーするという、何かとカネがかかるカリフォルニア州です。
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ということで、ギャビン・ニューサム州知事は今年度の予算編成で95億ドルを「インフレ救済金」として納税者に直接還元する予算を編成したわけです。納税の一部還元の対象となるのは、2021年10月15日までに確定申告した2020年度分で、調整後総所得(AGI)が限度内にあるのが最初の条件で、また被扶養者の有無やその人数が関係してきます。
還元額は3つのグループに分類されており、最初のグループはAGIが7万5000ドルまでの個人(single)納税者と同15万ドルまでの合算(joint)納税者で、前者の場合は還元額は350ドル、後者は700ドル。被扶養者1人につき350ドルが加算されます。このグループは全納税申告者の約80%が該当します。
第2グループは個人の場合は7万5000ドルから12万5000ドル、合算は15万ドルから25万ドルが対象で、還元額は前者が250ドル、後者が500ドルで、被扶養家族1人につき250ドルが追加。全申告者の約12%です。
第3グループでは単身申告者については12万5000ドルから25万ドルは200ドルの還元、合算申告では25万ドルから50万ドルの場合は400ドル還元で、いずれも被扶養者は1人当たり200ドル追加となります。このグループは全体の約6%とのこと。
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還元額の送金方法ですが、納税申告をオンラインで済ませ、リファンドがあった場合にもオンラインで直接金融機関の口座で受け取っているという申告者へは、10月7日から同25日の間に還元額が入金となる予定です。その他の金融口座への入金は10月28日から11月14日にかけて順次実施されるとのこと。納税申告やリファンドでオンラインを利用せず、またリファンドを直接預金で受領しない納税者には、10月25日から12月10日までに還元金額のデビットカードが郵送されてきます。その他のケースでは、来年1月15日までにデビットカードが送られてきます。なお低所得で納税義務がないなどの理由で2020年度分の納税申告をしていない者は還元の対象から外れますが、州政府では、これらの人々にさまざまな救済策を用意しています。
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以上がMCTRの概要で、ニューサム知事による選挙目当ての「カネのバラマキ」だとの批判もあります。コラム筆者は税務の専門家でもなく、誤りや誤解があるかもしれませんので、詳しくはMCTRのネットサイトftb.ca.govを閲覧するか、税務専門家に問い合わせることをお勧めします。
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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)
通称:セイブン
1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。
(9/27/2022)