10月に秋の“ボーナス” カリフォルニア州 納税者へ還付金支給決定

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アメリカ101 第142回

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カリフォルニア州財政が予想以上の大幅な黒字計上の見通しとなったことで、納税者への還付金支給プランがようやく最終的に確定、最低で350ドル、最高で1050ドルが今年10月には納税者に給付されることになりました。銀行口座への振り込み、あるいはデビットカードでの支給となります。余分な税金を支払ったものが、余剰金が生じたので戻ってくるのは当然のこととはいえ、嬉しい「秋のボーナス」となりそうです。

株式市場を中心とするマーケットの好調が続き、その取引に伴うキャピタルゲイン(資本利得)への課税でカリフォルニア州政府の所得税税収が急増、7月1日からの2022-23財政年度州政府予算での黒字幅は1014億ドルとなりました。今年1月の州議会予算分析室(LAO)の試算では黒字幅は最大290億ドルとのことでしたが、その後うなぎ上りに増えた結果、潤沢な財政状況を背景に、ギャビン・二ューサム州知事と与党・民主党が絶対多数を占める民主党が、仮にカリフォルニア州が独立国家だとすると、その経済規模では世界第5位の“経済大国”であり、アメリカ有数のリベラル州(ブルーステート)として、「大きな政府」を前面に打ち出した総額3079億ドルの予算案を編成、その一環として還付金支給が本決まりとなったものです。

その目玉施策は、170億ドル規模の「救済パッケージ」で、家族、シニア、低所得者層、中小企業などへの支援です。そしてニューサム知事は予算案署名にあたり声明を発表、先の連邦最高裁判所での「人工妊娠中絶は憲法上の権利とは認められない」との判断を受けて、「中絶に関する女性の選択権維持」を表明すると同時に、ヘルスケアの拡充、弱者救済、気候温暖化対策など「ブルー
ステート」としての面目躍如の姿勢を明らかにしました。

新年度予算に織り込まれた納税者への還元プランは3段階から成り、還付金は所得水準にスライドして設定されています。

まず、
①年間所得7万5000ドルまでの個人納税者、同15万ドルまでの合算(joint)納税者のケースでは、個人が350ドル、合算が700ドルで、扶養家族がいる場合は350ドルが追加となり、最高1050ドルです(合算700+扶養350ドル)

②年間所得12万5000ドルまでの個人納税者、同25万ドルまでの合算納税者のケースでは、個人が250ドル、合算が500ドルで、扶養家族は250ドル追加で最高750ドル

③年間所得25万ドルまでの個人納税者、同50万ドルまでの合算納税者のケースでは、個人が200ドル、合算が400ドルで、扶養家族は200ドル追加で最高600ドルとなります。

そして当然ながら納税義務がない非課税の住民や、所得水準が50万ドル以上の高額所得者は、この還付金の対象外です。しかし「弱者救済」の観点から、州政府が運用する「補助的所得制度」(Supplemental Security Income)などを活用して、これらの人々にも200ドル程度の給付金が行き渡る方策が採用される見通しです。

このことろアメリカ経済は、ウクライナへのロシアの軍事侵攻に伴う世界経済への打撃や、国内でのインフレ高進で金利水準が上昇するなどのマイナス要因で、リセッション(景気後退)懸念が高まっており、いずれカリフォルニア州の経済にも悪影響を及ぼすことは間違いありません。その場合には所得税収入にも打撃となるわけで、今回のような納税者への還付金といった施策が再度採用されるかは不透明ですが、取り敢えずは「秋のボーナス」を楽しみにするということでしょう。

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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(7/5/2022)

 

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