相続・贈与も見据えた不動産の活用法 〜アメリカの市民権・永住権との関係、日本国内での相続計画〜

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相続・贈与も見据えた不動産の活用法
〜アメリカの市民権・永住権との関係、日本国内での相続計画〜

不動産購入を検討する際、今は投資や自宅用が主な目的でも、「将来、誰にどう引き継ぐか?」という相続・贈与の視点も非常に重要です。特に、アメリカに在住し、市民権または永住権(グリーンカード)を保有している方にとっては、日米両国の税制や相続ルールの違いに注意する必要があります。

日本の不動産は相続税の対象。ただし「評価額」に注目

日本では、相続時に不動産を所有していると、その資産価値に応じて相続税が課税されます。ただし注意したいのは、「市場価格」ではなく相続税評価額(いわゆる路線価・固定資産評価額)が基準となることです。

例えば、実際には5,000万円で売れる物件でも、相続税評価額が3,000万円程度であれば、その金額を基に税額が計算されます。これは現金や株式よりも課税額が低く抑えられる可能性があるという意味で、不動産は節税効果のある資産と見なされることもあります。

また、自宅として使用していた不動産については、「小規模宅地の特例」により最大80%評価減が認められるケースもあり、家族内での相続においては非常に有利です。

相続税の基礎控除と税率

2025年時点での日本の相続税は、以下のように計算されます:

基礎控除額
→ 3,000万円 +(法定相続人の数 × 600万円)
例:配偶者+子2人の場合 → 3,000万円 +(3×600万円)= 4,800万円まで非課税

超えた部分に対して10%〜55%の累進税率が課されます。
つまり、不動産を含む全資産の評価額がこの基礎控除額内に収まっていれば、相続税は発生しないことになります。

アメリカ市民権・永住権との関係

米国市民やグリーンカード保有者が日本の不動産を相続・贈与される場合、以下のような点に注意が必要です:

・Form 3520の提出義務(贈与額が$100,000超の場合)
・不動産を売却した場合のキャピタルゲイン課税(アメリカ側)
・相続後も日本に資産を残す場合、FBARやFATCAの報告義務
・米国のエステートタックスと日本の相続税の二重課税リスク(条約で調整可能)
※特にアメリカ国籍を持つ子どもへ日本の不動産を相続させるケースでは、日米両国の税理士との連携が不可欠です。

不動産を活かした生前対策

・生前贈与(暦年110万円まで非課税)
・法人化して資産承継
・不動産を活用した資産の分散と圧縮

これらの手法は、節税だけでなく、家族間のトラブル回避にもつながります。相続・贈与は「対策しないこと」が一番のリスクです。

相続後の実務:登記と管理、売却

不動産を相続した場合、所有権移転登記を行う必要があります。放置すると後の売却や管理で問題になるため、必ず手続きを行いましょう。

また、遠方(海外)に住んでいる相続人にとっては、「日本の管理会社との連携」「賃貸or売却判断」も重要な実務です。信頼できる管理者・専門家との関係構築が、相続後の資産活用を大きく左右します。

(9/8/2025)


鍵山 学(Manabu Kagiyama)
不動産・ライフサポートのエキスパート
DOTOWN, Inc. 代表

25歳でアメリカ・サンディエゴへ渡り、現在まで26年以上にわたりアメリカでの生活を築いてきた。異国の地での経験を活かし、不動産、開発、ライフサポート事業を展開。現在は DOTOWN, Inc. の代表として、日本とアメリカの架け橋となるビジネスを手がけている。

DOTOWN(DOTOWN, INC. DRE#022113) は、日本で不動産開発や管理、介護・高齢者サービスなど幅広い事業を展開しており、「人々が安心して暮らせるコミュニティづくり」を理念に掲げる。鍵山はその経験をもとに、アメリカ在住の日本人がスムーズに日本へ帰国し、新たな生活をスタートできるよう支援するプロジェクト を進めている。 www.dotown.co.jp
■問合せ: m.kagiyama@dotown.co.jp t.saito@dotown.co.jp

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