各国の2022年のWord of the yearが発表 「だます」「強欲」など、政治的背景が顕著

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アメリカ101 第166回

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「gaslighting」「goblin mode」「permacrisis」「teal」「homer」といった言葉が、2022年の世相・時代精神(zeitgeist)を反映した「今年のワード(単語)」(Word of the year)だそうです。いずれもイギリスやアメリカなどの主要な英語辞書出版社が選んだもので、日本では、「現代用語の基礎知識」を出版する自由国民社が年末に選ぶ「新語・流行語大賞」に相当するといえるでしょう。

アメリカの代表的な辞書出版社メリアム=ウェブスター(MW)が選んだのが「gaslighting」です。オンライン英和/和英辞典で知られる「英辞郎」では、「(心理的手段を用いて人を)正常ではないと思い込ませる」「(心理的に操って人を)だます」とありますが、MWによりますと、今年になってからのオンライン検索件数が1740%増という記録的なレベルに達したとのこと。事実とは全くかけ離れたフェイク・ニュースや陰謀論の拡散が背景にあると指摘しています。このほかロシアで政治的影響力を強める「oligarch」(オリガルヒ=新興財閥)や新型コロナウイルスに関連したオミクロン、さらにはイギリスのエリザベス女王死去に伴い王位に就いた新国王チャールズ3世の配偶者カミラ王妃の称号である「Queen Consort」などへのアクセスが増えたようです。

これに対して、一連の英語辞典で知られるイギリスのオックスフォード大学出版局の「今年のワード」は「goblin mode」でした。「醜い姿で悪事をはたらく小悪魔」を意味する「goblin」にまつわる「わがままで、怠惰、杜撰で強欲」といった振る舞いが現代人に見受けられるということでしょうか。そして同じイギリスの辞書出版社であるコリンズでは「permacrisis」を選んでいます。恒
常的(permanent)に危機(crisis)が続く内外情勢を指す造語です。さらに同じ英語圏であるオーストラリアのマクアリー辞書(Macquarie Dictionary)の「今年のワード」は「teal」です。中間色からディープなグリーンという「青緑色」のが本来の意味ですが、同国の国内政治用語として使われています。「概してイデオロギー的には穏健な見解を有するものの、環境問題や地球温暖化を政治の最優先課題と位置付け、急進的な態度を打ち出す政治家」を意味します。これらの政治家は今年の議会選挙戦では青緑色の服装を着用、当選者を出しており、同辞書は「tealは極めて重要な概念であり、同時にオーストラリアの文化および政治の基軸である」として、その意義を強調してい
ます。

「homer」はケンブリッジ大学出版局が選んだワードです。もちろん野球のホームランを意味しますが、野球の“普及度”が低いイギリスだけに、「『home run』の省略。野球でボールを打って得たポイント(得点)であり、通常ボールが球場の外野フェンスを越え、ランナーは全ての塁を回って、スタートしたベースに戻ってくることができる」と懇切、丁寧に説明しています。

そして参考までに、日本では今年は「村神様」が新語・流行語大賞に選ばれました。プロ野球(NPB)東京ヤクルトスワローズ所属の内野手、村上宗隆が史上初の5打席連続本塁打、史上最年少の三冠王を記録するなどの“神憑り”的な活躍ぶりを表現したものです。

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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(12/20/2022)

 

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