民主党はカマラ・ハリスが軸、 共和党はトランプの去就次第-2024年次期大統領選

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アメリカ101 第136回

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今回のテーマは、「アメリカの政治」という「The Big Picture」です。というのも、現在79歳という“後期高齢者”ジョー・バイデン大統領が2024年の次期大統領選挙に出馬するか、そして前回2020年の選挙でバイデンと争ったドナルド・トランプ前大統領が、「大統領選での3回目の勝利」を目指して出馬するかといった、アメリカの将来を大きく左右する「?」がある中、その道筋を占
う必要があると考えるからです。

 

2024年の大統領選挙はアメリカ建国以来60回目という節目にあたります。それは、アメリカが抱えるさまざまな課題をめぐり、民主党と共和党という妥協の余地のない対立姿勢を強める2大政党支持層の間での亀裂が一段と深まる状況の下での選挙となる見通しです。

 

現職のバイデンは、大統領としての任期切れの時点で82歳、再選出馬で勝利すれば、二期目の終わりには86歳です。現時点でも、すでにアメリカ大統領としては史上最高齢です。ご自身は繰り返して再選を目指すと公言していますが、それは「不出馬」と言ってしまえば、それで直ちに「Lame Duck」(レーム・ダック、死に体)と見なされて、求心力を失ってしまうから、当然のことです。最近の映像では、老人らしいチョコチョコとした歩き方が目立ちます。それだけでなく、初訪日の際の赤坂迎賓館での記者会見では、中国による台湾侵攻の場合のアメリカの対応についての軍事介入の有無についての質問で、中国を刺激しないために採用してきた年来の方針である「戦略的曖昧さ」(strategic ambiguity)で応じるのではなく、躊躇なくストレートに「イエス。
それがわれわれの責務(commitment)」と言い切って、その場に居た側近たち
が虚を突かれる場面がありました。

 

そんなわけで、端的には「バイデン再出馬はない」ということでしょう。そうなると、後任含みに副大統領となったカマラ・ハリスの昇格という可能性ですが、そうとも言えないのが、期待されていたハリスの「存在感」の薄さです。「人類が考え出した最も意味のない官職」(初代副大統領ジョン・アダムス)と揶揄されてきた閑職なのですが、カリフォルニア州司法長官など長年「検事役」を経験してきたハリスにしては、就任以来目立った業績はなく、世論調査でも、ボスのバイデンと同じく支持率は低迷したまま。最近では人工妊娠中絶問題への取り組みという大役を担っていますが、スムーズに「バイデンの後任」とはいかないようです。

 

次の民主党の大統領有力候補として評価が高いのが、同性愛者で多国語をマスター、アメリカのエリートコースの必修とされるローズ奨学金受領でオックスフォード大学に留学など“異才”ピート・ブティジェッジ運輸長官です。29歳でインディアナ州サウスベンド市の市長に当選、2020年の大統領選挙では健闘して注目を浴び、現職でも手堅い行政手腕を発揮している民主党の有力な「次世
代指導者」です。

 

一方の共和党は「すべてはトランプ次第」です。2020年選挙で「勝利宣言」をして現在に至るまでも「勝った」と主張、2024年には「大統領選挙での3勝目を狙う」といった気勢を上げているものの、実際出馬するかは不明です。敗北後、共和党の唯一の「実力インフルエンサー」として発言を続け、その影響力は衰えていません。今年11月の中間選挙に向けて、さまざまな公職候補選定に乗り出しており、そこで具体的な成果があれば、再出馬で「3勝目」を狙う可能性が高いとみられます。だが不出馬で、「無冠の実力者」としての役割を演じる場合には、大統領候補を含めた、さまざまな公選候補レベルでの選択や支援で巨大な影響力を発揮する「キングメーカー」となるのは間違いありません。

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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(5/24/2022)

 

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