スキーセーターが街から消えてゆく

 気候の良いカリフォルニアに住んでいる皆さんにはピントこない話題かも知れませんが、ここ数年東京では洋服屋さんにスキーセーターがほとんど売っていないんです。というか、まったく見かけないのです。私が若い頃には冬になると競ってスキーセーターを買ったものでした。やれノルディック柄が良いだとか、雪の結晶のデザイン格好いいとか、チロリアンセーターも可愛いなど、秋風が吹くころから男も女もその話題で持ちきりだった。そんな思い出があるので、今も私はシーズンになるとスキーセーターを求めてショップ回りをするのだが、見事なまでに売ってないのだ!これってどうゆうことなの?

 そうなんです、実はスキーセーターより安くて、暖かくて、軽い防寒具「フリース」と「ライトダウンジャケット」にその座を奪われてしまったのです!悲しすぎます。私たちがあんなに憧れたノルウェー製、ベルギー製のセーターは、重い!の一言で嫌われてしまったなんて寂しすぎるじゃないですか!でも嘆いてばかりじゃいけない、気を取り直さないと。

 実は良いことがありました。私が15歳の時から愛読しているファッション誌『メンズクラブ』の1966年の表紙になったスキーセーターを、何と55年の時を経てゲットする事ができたのです!! 本当に憧れでした。当時たまらなく欲しかったけれど、17歳の私にはお金もなく手が届かなかったのです。儚い初恋のようなものでした。そんな訳で毎年シーズンになると幻のセーターを探し求めていました。それがなんと先日、渋谷の小さな古着屋の片隅に淋しいそうにいるのを見つけたんです。びっくり!まさかこんな所で初恋の人と再会出来るなんて!この55年間で何人が袖を通したのだろう。どんな人生があったのだろうか?愛されていたのだろうか?そんな感情が湧き上がってきた。これからは私が大事に着てあげよう!

 そう、たとえ重くても、フリースみたいに防寒でき無くても、セーター着ると心が暖かくなるのです!やっぱりスキーセーターはいいんです!それに有難い事に人気が無いことでヴィンテージ物が破格の価格で売買されています。特に60年代、70年代のアイテムはデザイン的にも楽しいものが!更に80年代後半バブル時代のハデハデの物もねらい目です。おそらくLAの古着屋さんにはお宝物があるはずです。皆さんも着てみてください。人生観変わりますよ。ゲットして日本の友人にプレゼントするのも良いと思います。来シーズンは絶対に日本ではやりますから!日本からのバイヤーが買いに来る前に!スキーセーター楽しいですよ!


■テリー伊藤
演出家。1949年、東京都出身。数々のヒット番組やCMなどを手掛け、現在はテレビやラジオの出演、執筆業などマルチに活躍中。


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