2024年アメリカ大統領選挙 トランプ前大統領を含む13人の候補者

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アメリカ101 第192回

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まだ1年以上先の出来事で、今のところ別にそう詳しく知る必要はない」と言ってしまえば身も蓋もないのですが、来年11月5日の投票日まで続くアメリカの次期大統領選挙をめぐるさまざまな動きのひとつである野党・共和党の候補者選びをめぐる話題です。

今回の大統領選挙は、アメリカ合衆国が独立して以来60回目の選挙という歴史的なイベントであり、現職のジョー・バイデンを追い落とす側に立つ野党・共和党からは、これまでのところ、ドナルド・トランプ前大統領を含めて13人がホワイトハウス入りを狙って名乗りを上げているという“激戦”で、当面は、トランプが最有力視されている中での、この指名争いが焦点です。

これに対する民主党側の動きですが、昨年11月に80歳となった現職のジョー・バイデン大統領は、アメリカの歴史を通じて、就任時で最高齢の記録を更新しています。だが、前任者であるバラク・オバマが、公衆を前にしたイベントでは、両腕を抱えるようにして、颯爽とした小走りでの移動を誇示していたのに比べ、“後期高齢者”らしく慎重に歩くよう心掛けているようです。

それにもかかわらず、今月1日には、コロラド州にある空軍士官学校の卒業式に出席した際、演台から移動する際につまずき、転倒する場面がありました。オバマ・スタイルで両腕を抱えながら颯爽と移動しようとしたのですが、砂袋につまずき転倒。助けを受けて立ち直った際の最初に行動が、砂袋を指さすことだったのは、転倒した無念さを示すようでした。バイデンにとっては、再選を目指すにあたっての最大の試練が、高齢がハンディキャップとなっているような“弱点”を晒す場面を回避できるかという点にあるのを示すものでした。

一方の共和党側は、最高齢の候補者は77歳のトランプで、最年少は、両親がインド出身の37歳の起業家ビベク・ラマスワミーです。

肝心の指名争いでは、知名度が高く、厚い「ファン層」を有するトランプが、各種世論調査を通じて一貫してトップとなっています。しかし立候補者は、そのほとんどが実績のある“実力者”で、“人気投票”的な評価ではなく、「真っ当な政策を有する政治家」として定評のある人物揃いといえます。  例えば、ハドソン川を隔ててニューヨーク州に接するニュージャージー州出身のクリス・クリスティ(60)もそのひとりです。40歳代で州知事を二期経験、それ以前は連邦検察官で、2016年にも大統領選に立候補しており、共和党のベテラン政治家としての経験が豊富です。現職知事/同経験者ということでは、ダグ・バーガム(66)がノースダコタ現知事、ロン・デサンティス(44)がフロリダ州現知事。両親がインド出身で、唯一の女性候補であるニッキー・ヘイリーは、サウスカロライナ州知事を二期務めたのち国連大使を経験。今年初めまでアーカンソー州知事だったのはエーサ・ハッチンソン(72)で、トランプ政権で副大統領だったマイク・ペンス(64)はインディアナ州知事経験者。フランシス・スアレス(45)は現職のマイアミ市長。

13人の候補者のうち、黒人が二人です。うち一人は、唯一の黒人連邦上院議員ティム・スコット(57)で、もう一人は、ラジオ・トークショー番組司会者として知られたラリー・エルダー(71)。  マイノリティ-ということでは、ヘイリーとラマスワミーが該当しますが、後者はハーバード大学卒業後イエール大学で法務博士(JD)を取得、バイオ医薬品企業を立ち上げるなど、“典型的”なインド系の辣腕起業家です。以上、トランプを除けば、共和党側の各候補はは多士済々と言えそうです。

なお今回の選挙には、第三党である「緑の党」候補として、アメリカで最高レベルの知識人として知られる黒人のコーネル・ウェストが出馬しているのが注目されます。「文人」のハーバードで教鞭をとった哲学者・評論家で、どれだけ票を獲得できるかは別として、今回の大統領選に“色を添えた”感じです。

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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(6/27/2023)

 

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