ロサンゼルスの新たな観光名所 「アカデミー映画博物館」9月30日開館

アメリカ101 第101回

 

 いよいよウィルシャー・ブルバードとフェアファックス・アベニューの交差点角地に位置する「アカデミー映画博物館」(Academy Museum of Motion Pictures)が9月30日に開館します。「世界のエンタメの首都」「映画の都」と言われながら、ハリウッドには映画に関する総合的な博物館がなかったのですが、その最大イベントである恒例のアカデミー賞を主宰する映画芸術科学アカデミーが業界の総力を結集して建設したもの。それだけに、ハリウッド映画だけでなく、「動画」の歴史を網羅する世界に類のない映画に特化した大規模な博物館として、ロサンゼルスの新たな観光名所となるのは間違いありません。新型コロナ禍でオープンが延期となっていましたが、世界有数の博物館・美術館を擁する「文化都市ロサンゼルス」のイメージを高めるものとしてのデビューです。 

  

 博物館が位置するのは、「ロサンゼルス郡立美術館」(Los Angeles County Museum of Art=LACMA)や、「ピーターセン自動車博物館」、数万年前の天然アスファルトが湧き出て、マンモスなどの太古の動物の化石が発見されている「ラブレア・タールピッツ・ペイジ博物館」(La Brea Tar Pits and Museum)などが連なるウィルシャー・ブルバード沿いの「Museum Row」(博物館通り)と呼ばれる一帯です。 

    

 博物館は二つの建物から成り、主として展示があるのは、建物の角が金箔で覆われた巨大なシリンダー形状のオブジェが目立つサバン・ビル(旧メイ百貨店)で、新たに加わったのが、大きな透明ガラスに覆われた屋上スペースが特徴の別棟です。後者は、建築家のノーベル賞とも言われるプリッカー賞を受賞している巨匠レンゾ・ピアノの設計で、ハリウッドヒルが一望できる屋上スペース「ドルビー・ファミリー・テラス」のほか、座席数1000と同288の大小劇場があります。常設展示に加え、オープンを飾る特別展示は、「千と千尋の神隠し」や「となりのトトロ」などのアニメ名作で知られるスタジオ・ジブリの宮崎駿監督が取り上げられるという、日本人にとっても見逃せないものとなっています。 

   

 ロサンゼルスが実は、「文化都市」という一面を持っていることは、「アメリカの都市で人口一人当たりの博物館/美術館/画廊数がロサンゼルスがトップ」(ヨロラ・メアリーマウント大学)という記述があるほどの、ミュージアムの充実ぶりがうかがえます。「世界文化都市フォーラム」(World Cities Cultural Forum)という組織が、世界主要都市の「ミュージアム」数を、各国/各都市の関連統計に準拠して一覧表を作成しているのですが、そこではロサンゼルスは堂々と3位(総数218館)にランクされています。トップはパリ(297館、2位はモスクワ(261館)で、ソウル(4位)、ロンドン(5位)、東京(6位)、ニューヨーク(9位)ですから、大したものです。そして、その質の充実ぶりも見逃せません。LACMAはミシシッピ川以西の諸州では最大規模の総合ミュージアムです。大都市の街中にラブレア・タールピッツのような太古の痕跡があるのも特出しています。さらに実物の大統領専用機エア・フォース・ワン(Ronald Reagan Presidential Library、ロナルド・レーガン記念図書館)や有人宇宙船スペースシャトル「エンデバー号」(California Science Center、カリフォルニア科学センター)が展示されているのも特筆されます。 

   

 2023年には、科学センターのあるダウンタウン南のエクスポジション・パーク内のコロシアムに接する敷地に、「スター・ウォーズ」シリーズで有名なジョージ・ルーカス監督が総指揮をとる「ルーカス・ナラティブ芸術博物館」(Lucas Museum of Narrative Art)が完成する予定です。建設費10憶ドル(1100億円)という巨大プロジェクトです。 (以下次号に続く) 

 

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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(9/17/2021)

 

 

 

 

 

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