ドナルド・トランプ前大統領 副大統領候補選び

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アメリカ101 第199回

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来年のアメリカでの大統領選挙に先立つ“先物買い”シリーズの一環で、共和党の大統領候補指名が確実視されているドナルド・トランプ前大統領の副大統領候補選びが、今回のコラムのテーマです。

今月10日に発表となった「ファイブサーティエイト」による最新の世論調査では、同党の指名争いで、支持率53・4%という過半数で圧倒的な強さを示したのは、当然ながらトランプで、このまま順調にいけば指名獲得は確実な情勢です。そして2位がフロリダ州知事のロン・デサンティス(14・3%)ですが、3位には、7・5%で、マイク・ペンス前副大統領やニッキー・ヘイリー元国連大使といった著名な既成政治家を抑えて、ヘッジファンドやバイオテック企業などへの投資で巨額な利益を手にしているビベク・ラマスワミが入っています。

共和党の大統領候補については、6月30日付けの当コラム(192回)で13人を取り上げましたが、その一人がインド系二世で、最年少(38歳)のラマスワミ。大統領の有資格者としての最低年齢35歳をわすかにオーバーしたばかりで、当選すれば、43歳で就任したジョン・F・ケネディ(JFK)を抑えて史上最年少の大統領となります。

ハーバード大学で学士卒業、イェール大学で法務博士(JD)というアメリカでの典型的な優等生コースを経て、バイオ医薬品企業を立ち上げて成功したという起業家で、保守系政治家としての“登竜門”である、ルパート・マードックの率いるフォックステレビニュース専門局フォックス・ニュースで、コメンテーターとして知名度を上げてきました。

とくに保守系メディアで多大の影響力を有する大御所的存在であるグレン・ベックは、トランプの副大統領候補として最適任と推奨していますが、ラマスワミ自身は、ホワイトハウスの主(あるじ)となるための立候補であり、「閣僚ポストには興味はない」と公言しています。

このため、指名争いに敗北したあと去就が注目されていますが、トランプからの求めがあれば、それを拒否するのは難しいとの見方がある一方で、逆にトランプが「政治家として登り坂にある」ラマスワミに“主役の座”を奪われるのを恐れて忌避するとも推測もあり、指名確定後のトランプの動きが注目されています。

保守系メディアが、ラマスワミ以外にトランプの有力副大統領候補として名前をあげているのは、自身が今回の大統領候補として立候補しているサウスカロライナ州選出の上院議員ティム・スコットです。南部州である同州では、南北戦争以降では初めての黒人上院議員であり、共和党で唯一人の黒人上院議員。トランプ自身も有力な副大統領候補として検討しているといわれ、多くの黒人有権者の間では嫌われている共和党に対する黒人有権者の支持集めにプラスとなるというわけです。

そして、“驚愕のシナリオ”が、暗殺の凶弾に倒れたジョン・F・ケネディ大統領の甥で、ロバート・ケネディの第3子であるロバート・F・ケネディ・ジュニア(RFK Jr.)(69)の起用です。ケネディ家といえば、JFK以来一族挙げての民主党支持で有名ですが、コロナウイルス禍で反ワクチン主義を掲げて、ワクチン忌避運動で指導的役割を演じている“異端児”です。自身も民主党の大統領候補として出馬しているのですが、右派メディアの間では、「反エスタブリッシュメント統一戦線」として「トランプ/ケネディ・コンビ」の可能性が真剣に論じられていると伝えられており、来年の大統領選挙は波乱含みです。

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著者/ 佐藤成文(さとう しげふみ)

通称:セイブン

1940年東京出身。早稲田大学政治経済部政治学科卒。時事通信社入社、海外勤務と外信部勤務を繰り返す。サイゴン(現ホーチミン市)、カイロ、ベイルート、ワシントン、ニューヨーク、ロサンゼルス各支局長を歴任し、2000年定年退社。現在フリーランスのジャーナリストとしてロサンゼルス在住。


(8/15/2023)

 

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