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第六十五回
贈り物は白い紙で
贈答の形に込められた想い
旧暦三月の呼び名でもある「弥生」は、もともとは「いやおい」と読みます。「弥」とは「益々」という意味。草木がいよいよ生い茂る様子を表わしています。陽光と柔らかな春雨によって多くの植物が萌え出ずる時季である為、この名前がつきました。ほかにも百花繚乱となることにちなんで「花見月」や「花月」「桜月」といった美しい別名があります。そして、「二十四節気」は三月五日から「啓蟄」となりました。二十四節気は、一年を太陽の動きをもとに24等分し、春夏秋冬の季節の移ろいを細かく表した暦のことです。「啓」は「開く」、「蟄」は「冬籠りの虫」をあらわし、冬眠から目覚めた虫や動物たちが土の中から出てくる頃、という意味です。
三月は、日本では別れと出会いの季節であり、お餞別やお祝いなど、贈り物をお渡しする機会が多くあります。贈答の形に込められた想いを少し確認しましょう。
贈り物は白い紙で包みます。白は「清浄」を表わし、より清らかなものを相手にお渡ししたいという贈り主の気持ちが表れています。
そして、小熨斗を包みの右上に付けます。熨斗とは、アワビを伸ばして干した物で、今はアワビに似せた色の紙で代用しています。神様の好物で縁起物とされ、添えることで贈り物の格式が上がると考えています。また、「のし」の語源が「伸し」であることから、「貴方のお幸せが永く続きますように」という願いが込められています。その為、長く伸びてほしくない病気や災害のお見舞いには熨斗は付けません。また、生き物の殺生を連想させる為弔事の贈り物には用いません。


最後に水引を結びます。水引の結び方にも贈り主の気持ちを表現する役割があり、何度も結ぶことができる「諸輪結び(蝶結び・花結び)」は良い事が「何度も起こりますように」という想いが込められています。「真結び(結び切り)」の水引は、一度結んだらほどけることがない為、結婚やお見舞い・快気祝いなど、何度もあるべきではない贈り物に使用します。

(3/12/2026)

筆者・森 日和
禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com












