日本発祥の文化「畳」和室での歩き方|べっぴん塾

第三十八回

日本発祥の文化「畳」
和室での歩き方

畳は日本発祥の文化で、古くは約1300年前に編纂された「古事記」にも登場します。現存する最も古い畳は、正倉院(奈良県東大寺)の宝物の一つ、第45代聖武天皇(6世紀頃)がお休みになる時にベッドとして使われていた「御床畳」です。その後、平安時代に現在の畳の形となり、貴族の邸宅の建築様式が「寝殿造」に変わっていくと、板敷の間に座具や寝具として畳が置かれるようになりました。その様子は当時の絵巻物等にも描かれています。部屋全体に敷きつめるようになったのは、「書院造」が発展した室町時代(15世紀頃)に入ってから。一般の人々の間に広がったのは江戸時代中期(18世紀頃)以降といわれています。
現在は、畳が敷きつめられている部屋全般を「和室」と呼んでいます。

和室は設えを少し変えるだけで、リビングにも、ダイニングにも、寝室にも、応接室にも、書斎にも早変わりします。ひと部屋で幾通りもの使い方ができて便利な上、和室は多くのことを教えてくれる教場でもあります。この度は和室での作法のうち、歩き方について確認して参りましょう。

和室には、スリッパ等の履き物は脱いでから入ります。脱いだ履き物は、次に履きやすいように向きを変え、部屋の外に揃えて置きます。和室のなかを歩く時は、手は振らずに体につけ、「すり足」で歩きます。いつものように手を振って、つま先で蹴るように歩くと、畳に直に座っていらっしゃる皆様のお顔の前を手がぶんぶんと揺れて目障りである上、足の裏が見えて不快感を与えてしまいます。場の空気も乱れます。和室は周りの人の目線が低い所にある為、普段より一層の心遣いが必要となります。

人にだけではなく、畳にも優しく。「すり足」とは、畳を足で擦るように歩くことですが、実際は少し浮かせています。足を引きずると、畳が摩擦で痛そうです。また、早く傷んでしまいます。
人への心遣いだけではなく、物への心遣いも和室の作法から教わります。

(8/29/2025)


筆者・森 日和

禮のこと教室 主宰 礼法講師
京都女子大学短期大学部卒業後、旅行会社他にてCEO秘書を務めながら、小笠原流礼法宗家本部関西支部に入門。小笠原総領家三十二世直門 源慎斎山本菱知氏に師事し、師範を取得する。2009年より秘書経験をいかし、マナー講師として活動を開始する。
2022年より、廃棄処分から着物を救う為、着物をアップサイクルし、サーキュラーエコノミー事業(資源活用)・外国への和文化発信にも取り組む。
https://www.iyanokoto.com

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